腰にエプロン。頭に三角巾。手には包丁。
戦闘準備は完了した。
何を隠そう今日は……


『調理実習じゃぁぁあぁ!』


「お前なに作る気だ」

『ムニエルと味噌汁だよ!』

「なんだその和洋の組み合わせ」
『美味しそうじゃん』
「じゃあ両手に包丁いらんだろ。下ろせ」
『ゑー!』


やる気の表れだったのか持ち構えていた包丁を奪われ名前は少し不服そうだ。
だがその代わり見返してやると言わんばかりに立ち上がる。

が、途端に何かを探すように辺りを見回し出した。


『…あれ?』
「今度は何だ?」

『神童くんは?』
「神童?」
『いやだって、味噌汁の具が
神童はワカメじゃないぞ

『嘘!?あれ増えるワカメじゃないの!?絶対あの髪の毛お湯に浸けたら増えるでしょ!!』


常識の範囲内での素っ頓狂な事を言われたら霧野が逆に言葉に詰まる。
と言うかため息しか出ない。
何故コイツと同じ班なんだと軽く先生を呪った。


「名前、頼むからジッとしててくれ」
『やだ』

「……」


せめて調理に加わることを控えて欲しい欲しかったものの、名前はやる気満々だ。



『だって』


きゅっと霧野のエプロンの裾を掴み、打って変わって少し俯いた様子の名前に霧野はどうしたのかと名前を見やる。
さっきまでの料理への執着はどうしたのか。
じっと名前を見ていると少し視線を右往左往させながら小さな声で言った。



『将来蘭ちゃんに美味しいご飯作るんだもん』



名前の言葉に霧野は目を見開く。
あんな破天荒な事を言い出すわりに、可愛い所をみせる。

うなだれる名前の頭に手を置いて、三角巾で纏まっている髪を乱した。



「お前が怪我したら元も子もないだろ」
『でも…』



「俺が毎日ウマい飯食わせてやるから」



次は名前が目を見開く番。



「ほら、やるぞ」
『うん!』


エプロン姿で調理実習をこなす間に、こんなのも悪くないかな、なんて名前は考えるのだった。




想像朝景色

(蘭ちゃーん!フライパンから火が!!!!)
(はぁぁっ!?)

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