快晴の空を窓辺から確認し、名前は胸を弾ませながらクローゼットを開ける。

中には色とりどりな洋服達。
大抵が兄である拓人の買ってきたものだったりするが、なんだかんだで名前の趣味を熟知している拓人が買ってきた服は皆名前のお気に入りだ。


『どれにしようかな〜』


鼻歌を歌いながら次々に服を体に合わせてはイマイチだったものをベッドに投げ重ねていく。
数分かけて納得のいったコーディネートが決まったのか投げ重ねた服を戻した。
時計を見て慌てて玄関まで小走りで駆けて行き、これまた服にサンダルを探す。



「名前、どこか出掛けるのか?」
『ぇ、あ、葵ちゃんとお買い物に行くの!』

「……そうか、気を付けろよ」
『うん!』



いってきますと元気に屋敷を出て行った名前。
ドアが閉まった瞬間に、神童はとある場所へと電話をかけた。













『篤志先輩!すいませんっ』
「気にすんな、そんな待ってねぇよ」


賑やかな人通りで見慣れたワインレッドの髪を見かけ、名前は少し息を切らせながら近付く。
待ち合わせの相手、南沢は予測済みだったのか既に買ってあった缶ジュースを名前に渡し、側にあったベンチへ座った。



そんな2人を遠目から見守る…もとい、凝視する人物が。


「おい霧野あれはどういうことだ」
「俺が知るか。…巻き込んで悪いな松風達も」
「やっと俺に電話がきた理由がわかりましたよ…」



神童が名前が家を出て行った直後の電話相手は天馬である。
理由は単純明快。

あんなオシャレをして男に会いに行くなんてけしからん。

名前は確かに葵と、と行ったがそれが100%だという確証はない。
だから天馬に電話をし、葵の予定を確認させたのだ。



「案の定とは言え…まさか相手が南沢さんとは…!」



今すぐハンカチでも噛みそうな勢いで南沢を睨みつける。
名前の事に対しては相変わらずな神童に天馬と信助は苦笑いしかできなかった。





「ちゃんと神童に気付かれないようにしたか?」
『はい!葵ちゃんとお買い物って言ってきました』

「よしよし。じゃ、行くか」



名前が嘘をついた事の発端は南沢だったらしい。

名前の頭を撫でた南沢が立ち上がり、名前は空になったジュースをごみ箱に入れた。





「南沢さん…俺がいない間に名前にそんなことを…!」
「そんなことって頭撫でただけだろ」
「十分だ名前の頭を撫でていいのは俺だけって決まってる」

「…キャプテン……」



正直天馬達は今すぐにでも逃げ出したい気分だったが神童の纏う雰囲気がそれを許さない。


「ターゲットが店に入ったぞ」
「先輩に何する気だ。あれは……スポーツ用品店?」
「あ、ここってよく部活のもの買う所だって音無先生から聞きましたよ」



南沢と名前が仲良く(しているように見える)足を並べて踏み入れたのは大手のスポーツ量販店。
天馬の言った通り部活でよく世話になる、雷門サッカー部は言わばお得意様の店である。

2人は入店してからは二手に分かれ、それに合わせて神童たちも二手に分かれる………かと思いきや名前の方にしか尾行は続けなかった。
拓人から見えるオーラが禍々しくもあるが名前に何もない所を見たからか少しそれが和らぐ。
名前が手に取って見ているのはやはり部活に使うドリンクなどだった。


「やっぱりただの買い出しじゃないのか?」
「いや…まだわからないぞ……もしかしたらこの後名前をどうにか「しねぇよシスコン」

「「み、南沢先輩!?」」




『お兄ちゃん?』



油断大敵。背後から突然やって来た南沢に思わず声を上げた天馬と信助の声に、前方にいた名前がクルリと振り向いてしまった。
しっかりと目視された4人は南沢と名前を交互に凝視する。


『お兄ちゃん達来てたんだ!』

「違うぞ名前!俺はお前が心配で後をつけて「あー!!あー!!そう!俺たちも偶然ここに来てたんだ!」
「名前はどうして先輩とここに?」


拓人発言を天馬が掻き消し、霧野がフォローにかかる。
名前は3人の苦労など露知らず、笑いながら南沢へと視線を送った。


『部活の買い出しは勿論なんだけど私の個人的な買い物にも付き合って貰ってたの』

「個人的な買い物…だと…!?」
「スパイクな」
『天馬くん達は?』


まさか神童の様に後をつけてきたとは言えまい。
神童を黙らせ嘘八百で自分たちも買い物にきたと言えば明らかに南沢は怪訝そうな顔をしていた。
(と、言うか完全に気付いてる)


「何の為に俺が名前に嘘つかせてまでここに来たと思ってんだか」
「…心中お察しします先輩」


ため息をつく南沢の肩を叩く霧野の視線の先には、南沢に何もされなかったかを必死に問い詰めるサッカー部キャプテンの姿があった。




だって心配だから!

(と、言うわけで俺たちも名前の買い物に付き合う事にした)
(なにがと言うわけでですかキャプテン)

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