満天の星空の元、河川敷に並んで座り込んで空を見上げる。
今日は七夕。
年に一度、織り姫と彦星が出会える唯一の日。
『綺麗だねーっ!』
「だから言ったろ?ここは穴場だって」
『うん!』
夜に河川敷なんて何をするのかと思ったけどね。
昼間晴れ渡っていた今日は絶好の天体観測日和だと思う。
『ねぇ蘭丸』
「なんだ?」
『蘭丸はさ…もしも私と年に一度しか会えなかったらどうする?』
ふとした疑問を蘭丸にぶつけてみた。
いつもよりもすんなりと言葉が出て来たのはきっと気のせいじゃない。
隣を見つつ返答を待てば蘭丸は空を見上げたまま私の手を取った。
「とりあえず俺はそんな事考えない」
『え?』
どう言う事、
聞こうと思って開いた唇は塞がれていた。
綺麗な星空が見えなくなる。
目の前に広がるのは蘭丸の顔。
「俺は名前を離すつもりも離されるつもりもないからな」
唇を離された開口一番がそれだった。
そう言い切る蘭丸は見かけに寄らず、本当に見かけに寄らないけど男らしい。
(言ったら怒られそうだけど)
『でも、もしもだよ?』
「もしもでもありえないから考えないだけだ」
側にあった蘭丸の腕に引かれ、胸に収まる私の体。
本当、こんな華奢な体のどこにこんな逞しさがあるのか。
優しく、でも力強く私を抱きしめる蘭丸の胸の中少し眠くなりそう。
『…離したら許さないから』
「あぁ。覚悟しとけよ?」
蘭丸の笑顔は酷く挑戦的で。
受けて立ってやろうじゃないか、と思った矢先降ってきた唇を私は甘んじて受け止めた。
星空の下、尋常に勝負
(愛されただけ、貴方を愛す)
(ごめんね織り姫に彦星、私は毎日彼に会えて幸せなの!)
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