成績優秀で容姿端麗、フッた男は数知れず。
フラれた男も純粋な表情にフッた苦みなど忘れてしまうと言う。
そんな彼女はサッカー部のマネージャー。
今日も今日とて彼女を守るナイト達は彼女に付き纏います。
「苗字!このプリントを職員室まで運んでくれ」
『はい!』
授業中に集めたプリントを教卓に置いていた教師が名前に運ぶよう指示をする。
成績優秀な名前は教師からの信頼も厚く、それ故にこうした仕事を頼まれる事が多い。
素直にそれを承諾し教卓へプリントを取りに行こうと名前が席を立った時、ガタリと音がしたのは一つだけではなかった。
「名前、手伝うよ」
『ホントに?ありがとう霧野くん!』
そそくさと名前に近付き、手伝いという名目で名前と共にいる時間をゲットした霧野は人知れずガッツポーズ。
山積みにされたプリントをさりげなく自分の方を多めに取り、自分のアピールは忘れない。
「ふっ…小さいな霧野」
「はっ!?」
『神童くん?』
「名前、俺も久遠監督に呼ばれて職員室行くんだ。一緒に行っていいか?」
『いいよ。早くいっちゃお』
霧野にボソリと呟き、何もなかったかのように笑顔を振る舞ったのは神童。
名前には呟いた言葉は聞こえなかったらしい。
二人並んで職員室まで、という霧野の企みはこうして阻まれることとなった。
職員室までの道程を三人で並んで歩く。
「あの先生人使い荒いよな」
『ここまで慣れちゃうけどね〜』
「へぇ、俺の名前をこき使うなんていい度胸してんなあの先公」
『ひゃわっ!?』
急に背後から囁かれた驚きにプリントを手放しかけたもののプリントを抱えていた腕ごとその声の主に抱きすくめられた為、名前の手から紙が散らばるという事態は起こらなかった。
『み、南沢さん!』
「よぉ」
名前が名前を呼べば一瞬に男三人の空気が凍る。
『すいません、職員室にこれを届けないとなんで、放して貰えます?』
「そうですよ南沢さん」
「ほら名前嫌がってます」
「嫌か?名前」
『嫌じゃないですけど…』
「なら文句ないだろ」
勝ち誇った表情を見せる南沢に神童と霧野は眉をヒクつかせる。
その一方で名前は困惑した表情を浮かべた。
「南沢さん、早くしないとチャイム鳴りますよ」
「後輩の授業妨害していいんですか」
それならと言わんばかりに南沢のイメージダウンを図る。
転んでもただで起きてたまるか。
いやむしろ転んでたまるか。
「じゃあ神童が名前の分のプリント持って行けばいいだろ」
「俺は監督に用事があるので」
「チッ」
「今舌打ちしましたね」
「気のせいだ霧野」
辺りの生徒が四人の周りを避けはじめた。
そんな様子を見た名前はえいっ、と掛け声と共に南沢の腕をくぐり抜け、霧野の腕から残りのプリントを引ったくる。
『なんだか盛り上がってるみたいだから、私が行ってくるね!』
運動部顔負けのスピードで、最上級の笑顔を浮かべて名前は去って行った。
笑顔に気を取られていた三人が、慌ててその背中に手を伸ばしながら廊下を駆けて行ったのは数秒後の話。
あっけからんナイト達
(お前のせいだぞ神童…!)
(何罪擦り付けてるんですか南沢さん…!)
(つか名前足はやっ!)
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