曇天の空から降り注ぐ雨。 空から地に降り注いでいるのは雨だけでなく、気分も空から地に落ちていく。 とは言っても私は雨でそんな気分が下がることはない。 あえて言うなら雨の中を傘を差して歩くのが面倒くさいだけ。 別に雨自体は嫌いじゃない…んだけど。 「雨か…今日部活あるかなぁ…」 「外はないんじゃない?筋トレとかかも…」 「だよねー…」 そうだよこれだよ。 私があえて雨が嫌いな理由を挙げるとしたらさっき挙げた傘の件とこれ。 「ボール蹴りたいなぁ〜」 天馬がずっとこれしか言わなくなること。 『雨の日ぐらい大人しくしてなさいよ』 「だってジッとしてられないだろ!」 うずうずする様子を抑えきれないのか体が何かしら動いている。 隣を見てみれば信助くんも飛び跳ねてその様子を体現していた。 別に趣味に打ち込むことが悪いことだとは思わない。 (ただ…天満の場合度が過ぎるとは思うけどね) 『…じゃあ今日は私先に帰るからね』 天馬がサッカーが好きなことは知ってる。 だから私は彼女というポジションにいながらもサッカーに対してはこの結構な距離感をずっと保っているのだ。 「名前、いいの?天馬待たなくて」 『いいよ葵ちゃん。大丈夫』 「そう……」 乙女心のわからない奴、と葵ちゃんはよく天馬を怒ったりする。 でもそれを分かって天馬と付き合ってるのは私だから気にしてないんだけどね。 そんな私たちをよそに天馬と信助くんは今日の部活はなんだろうとか言うことに対する会話に火をつけていた。 …まぁ時には一緒にいたいと思うんだけども。 わがまま言って幻滅されるのも嫌だし。 「天馬、信助!」 「あ、キャプテン!」 「今日の部活のことなんだが……」 「はい!」 わざわざ1年生のクラスまで報告にやって来たキャプテンさん。ご苦労様です。 廊下にやって来たキャプテンさんに、まるで餌を目の前にした犬の様に廊下まで駆けていく。 『好きなんだなぁ…』 天馬の活き活きした表情は外の雨なんか忘れさせる。 何を話してるのかは聞こえないけれどまぁ部活の話なんだろう。 しばらくキャプテンと会話をする天馬と信助くんを眺める。 キャプテンさんが手を振って廊下を戻っていくのが見えてから天馬がこっちに向かって走ってくる。 「名前!今日一緒に帰ろ!」 『え…?部活は?』 「今日はないって!」 『…自主練もいいの?』 「いいの!今日は名前と帰りたいんだ!」 これを天然でかましてくれるから天馬は真っ直ぐでいられるんだろうね。 敵わないなぁと思いながら肩を並べるとは少し違う、傘を並べながら帰る2時間後の放課後を想像していた。 あなたと手持無沙汰の時は (真っ直ぐに自分のやりたいことをやっててもいいから) (たまには私に構ってよね) _ |