ガコン、無機質な自販機の中から落とされた1つの缶を手にとって頬に当てる。 アルミを隔てての程よい温度に接している頬だけでなく心までもどことなく温まる感じがするのは気のせいだろうか 。 そのくせ剣城はすました顔で私の隣を歩いている。なんでだ。 『そんなカッコで寒くないの?』 「……別に」 『いや嘘でしょそんな薄着で!せめて学ランちゃんと着たら!?』 「放っとけ!」 あ、でもこれ学ランじゃなくでマント…? もう今はどうでもいいや。とりあえず見てて寒い。 私は買ったばかりで暖かいココアを開けた。 ほんのりと香る甘い香りに凍りそうな心が溶かされていく感じがする。 冬の醍醐味、こたつでみかん並の癒し効果を堪能する私。 カイロ代わりに缶を両手で持ちながら白い息を吐き出す。 『剣城も飲む?』 「俺が甘いモンは嫌いなの知ってて言ってるだろお前」 『あ、バレた?』 茶化したこともバレバレなようなので大人しく自分で暖かいココアを喉に流し込んでいく。 自販機のあったかい飲み物って結構熱いよね。時々油断し火傷するんだけどアレって私だけ?。 『ぷはーっ。やっぱこれだね!』 「オッサンか」 『ちょ、そこは■ッテのト●ポって言わないとダメでしょ』 「知るか!」 全力でどうでもいいことに突っ込む剣城に内心思わず笑ってしまう。 でもあの流れはトッ●って言わないとね!なんか許せないよね! ちょっと機嫌のよくなった私は缶を右手に持ち替え、空いた左手で剣城の手を取った。 その手はやっぱり冷たくて、ほれ見ろ言わんこっちゃない。 先程よりかは幾度か上がったであろう体温で剣城の手を温めにかかる。 自然と絡み合う指に少し気恥しさが襲う。 『剣城冷たい』 「お前が熱いだけだろ」 悪態を付くように言っているけど剣城は私の手を離そうとはしない。 顔を覗き込もうとしたら顔を背けられたけど剣城の横顔は少し赤くなってるのが伺えた。 じんわりと繋がれた手から温度が渡っていく。 半分になった手の温度。 でも缶を持っている右手よりも剣城と繋いだ左手の方があったかいような、そんな気がする。 実はこうして手を繋ぐ口実にココアを買ったなんて言ったら剣城はなんて言うだろうか。 次に買うなら剣城でも飲めるようなコーヒーとかにしよう、なんて考えながら私は絡められた手に力を込めた。 有糖缶コーヒー (無糖のコーヒーに込められた) (愛と言う名の甘さ) _ |