キラキラとした輝かしいまでのオーラ。
年上とは言え滲み出す美しさに嫉妬すらを越えた超越感がある。
それが私達木戸川清修の新監督、亜風炉照美さんだ。

分裂状態にあったサッカー部を立て直し、チームを一つに纏めあげたカリスマ的な才能。
それだけでなく容姿は端麗、まさに才色兼備を体言した様な人だと思う。


『亜風炉監督、これ…』
「あぁ、昨日頼んでたデータだね。ありがとう。次はこっちをお願いしてもいいかな」
『はい!』


監督の性格を表すような整った字が這う紙の挟まれたバインダーを受け取る。
一枚一枚紙をめくって行けば綺麗に書かれたデータに、私が纏めなくてもいいんじゃないかと若干思った。
それでもそれは私に与えられた仕事。
誰でもない私に任された仕事に少しの優越感。
亜風炉監督は昨日私が纏めてきたデータをパラパラとめくっている。(ま、間違えてないかなぁ…!)


「流石、今回も手際がいいね」
『…!ありがとうございますっ!』


監督が目を細めて私を見やる。
そんな澄んだ瞳に射抜かれるのにはいまだに慣れない。
と言うか絶対に慣れない自信がある。
よもやこの人は確信犯なのだろうか疑いたくなるレベルだ。

このはにかんだ笑顔にやられない人がいるのだろうか。いや、いない。
あ、これ授業で習った反語だ。
…ってそうじゃなくて。


渡されたバインダーを抱きしめて監督の(無意識な)攻撃的笑顔に堪える。
慣れないけどその笑顔を見たいと思うのは下心か恋心か。
どちらかというと後者なんだけど、若干前者か混ざっているという悲しい事実。
だから私は毎日監督に渡される仕事を完璧にこなそうとしている。

褒められたいから、なんてなんとも子供染みた動機。

それでも監督のお役に立てるならいいとも思ってたり。
ギブアンドテイクなんて都合のいい言葉を頭に巡らせながら私は早速データを纏めにかかろうと失礼します!と頭を下げた。
今日はどれぐらい時間がかかるだろうかと考えながら振り向けば背後から凛とした鈴の様な監督の声。


「明日も楽しみに待ってるよ」


眩しい笑顔で言われたら言える返事はイエスだけだと思う。

こんな完璧な人に恋をしただなんて人は笑うかもしれない。
もしかしたら頑張ってという人もいるかもしれないし場違いだって怒るかもしれない、
でも、この人に恋をした私は本当に場違いなんだろうか?

バインダーから感じる監督の温もりを抱きしめる。


まぁ、今は隣にいれるだけで幸せだから…それでいっか。





平凡な自分にエール

(なーんて、いい子ぶってみたり)
(いいのいいの。それが私だから!)

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