外に出るにも少し出辛い時期になってくる。
登校の少しの時間も勿論下校の時間だって外に出たくない。
上着に手袋、マフラー耳あて。
防寒具が離せない中、無常にも校則というものはそれを禁止されたりもする。
ありえないと思うけれど今時こんなものOKにしたらちゃら付いたモノを付けてくる奴だっているだろう。
そういう意味では禁止するのはいいと思うんだけど…正規のものまで禁止するのは正直やめて欲しい。
そのくせに先生は防寒具を着込んだ上に暖かい来るまでやって来るんだ。全く不公平だと思う。


『寒っ……』


いってきますと家を出れば吹いてくる容赦なく吹いてくる強風。
朝なんだから気温が低いだけで勘弁して欲しいよね…。

一歩足を踏み出せばどうあっても隠せない足元だけはどうしても寒くなる。
男子はズボンなのになんで女子は年がら年中スカートなのか。
その分夏は男子が暑さで苦労をしているのかと思うとどうにか我慢でき………ない!
ジャージのズボンでも履いてやろうかなんて教師には反感を買うことしかしない考えはどうにかして打ち消した。

でもどうにかしてくれないかとは切実に思う。



「苗字ー!」

『あれ、浜野。おはよー』
「はよ!」



悪足掻きに手に息を吹きかけてみたけど殆ど温度はそのままで意味はなかった。
白く吐き出された息が空に消えていく中叩かれた肩にクラスメイトの影を見る。

一瞬だけど私に触れた手は随分暖かかった気がする。


『今日も寒いね』
「そうか?俺はあったかいけど!」
『え!?こんな寒いのに!?』
「俺ってば元から体暖かいんだよね〜」
『あ〜…なるほど…確かに浜野暖かそうかも』


やっぱり体温が高い人には寒いってあんまり思わないのかな。
羨ましいと思う反面体温の低い自分を呪う。


『も〜……手だけでもいいから暖めたいよね…』


えい、とスカートのポケットに手を突っ込む。

でも制服のスカートは右側面はチャックだから手が突っ込めるポケットがあるのは左側だけ。
左手は心なしか暖かくなるけどどうしようもない右手は外へ投げ出されたままだから勿論冷たい。


「っちゅーか、そっち側寒くね?」
『寒いよ〜…履いてるのがズボンだったら両手突っ込むのに…』


やっぱり男子のズボンは羨ましいと思う。
いざという時危ないと言われたっていざという時さえこなければ両手なんてズボンに突っ込んだっていいと思う。
それに比べて女子の不便なこと。


「んじゃ、ホイッ」
『えっ』
「これでどっちも暖かいじゃん!」


ポケットに入っていない右手が浜野の左手に包まれる。
浜野の言う通り元から暖かかったのであろう手に包まれる感覚はとても心地いいものだった。

学校に着くまでこのままなのかなぁなんて思いながらその手を振り払わないでいるのは惚れた弱みなのか。
思考を全部押し込めて私の手を包む浜野に私の右手を委ねることにした。




右手がずっと冷たいのは

(貴方に暖めてもらう為)

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