『ねぇねぇ剣城くん!今日こそは取材に!』

「……」


初めましてこんにちは。
新聞部1年生サッカー部担当、名前です!
カメラ・メモ帳・シャープペンシル、取材必需品3点セット片手にサッカー部に突然やってきた謎のエース、剣城京介くんに突撃取材中!

でもなかなか取材に応じてくれない…というか会話すらしてくれない剣城くんを追いかけ回すこと早1週間。
どんなにシカトされようがめげないんだかね!
新聞部の根性を舐めるなよぉぉ……!


『剣城くん!』
「………」

『つーるーぎーくーん!』
「………………」



あくまでもシカトを決め込む気か…。
なら私にも手は残されている。

パラリ、手帳を開いてとあるページで手を止めた。




『剣城京介。
雷文中学1年生
身長(ピー)cm、体重(ピー)kg
血液型(ピー)型

フィフスセクターのシードで黒の騎士団のキャプテン

家族構成は…むぐっ』



あ、流石にこれ以上はアウトだったかな。
物凄い血相でUターンしてきた剣城くんの手の平に口を塞がれ睨まれる。
黒いオーラ全開。まずいぞ墓穴掘ったか。

やり方はこんなでも初めて剣城くんから私の方に近付いてきてくれた。
新聞部として腕の見せ所はこれからだ。


「なんでそんなことまで知ってんだよ」
『そりゃあ新聞部ですから?で、剣城くん、取材には応じてもらえるかな?』

「……チッ!!」


やり方が脅迫くさい?そんなのスクープの為には知ったこっちゃない!

舌打ちした剣城くんに私はガッツポーズ。
彼の舌打ちは肯定の証!…の筈!



『じゃあ剣城くん。休日の過ごし方は?』
「取材ってサッカーのことじゃねーのかよ」

『いまや取材で求められているのはストレートなことだけじゃないの!』
「そんなもん言えるか」
『えー!!』


プライバシーの侵害になっては意味がない。
当たり前だけど一応本人の意思尊重だから(え?取材までは強引だって?気にしない!)これ以上は聞かないでおく。
取材での質問を纏めたメモに一つ×を付ける。
まだまだ質問はあるんだけど次に目についたのは一番リクエストの多かった質問。



『じゃあ好きなタイプは?』



剣城くんの目が丸くなった。
そんな剣城くんにずいっとカメラを構えて近付く。


「んなもんパスだ!」
『なんでー!全校の剣城くんファンが待ってるんだよ!?』
「知るか!」


いくら本人の意思尊重といっても記事を盛り上げるためこれだけは答えて欲しい。
逃がすまいと学ランの裾を掴み抗議してみる。
すると徐々に顔を赤く染めていく剣城くん。
これはまさかこの手の話に心当たる人がいるからなのか…!?


『もしかして剣城くん好きな人いる!?』
「……っ!!」


どうやら当たりだったようだ。
ポーカーフェイスだと思ってたけど結構表に現れるみたい。
すると剣城くんは観念したかのようにまたため息をついて「一回しか言わないからな」と私に睨みをきかせる。
(真っ赤な顔で睨まれても全然怖くなかったけど)



「いっつも俺に付き纏ってきて」
『うんうん』

「部活しか目に入ってねーのか知んねーけどやたらしつこくて」
『うん…?』

「毎日カメラ・メモ帳・シャーペン持って駆け回ってる奴」

『………!』



カシャンと音を立ててメモを取ろうとしたペンが落下した。
いくら鈍い私だってそれぐらいは理解してしまったつもりだ。

そんなこと言われたらこれを記事にすることなんて不可能じゃないか。






御蔵入りの取材記事

(書き掛けになってしまった取材メモは)
(私のポケットに永久保存されることになった)

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