私は南沢が大っ嫌いだ!!


『もうなんなのあのナルシスト!三国もどうにか言ってよ!』
「…そう言われてもなぁ…」

『だいたいこの雷門サッカー部はあの由緒あるイナズマジャパンのメンバーを多く排出したサッカー界の登竜門だっていうのに!内申書の為に入部したくせに背番号10番…!?どういう事!?』


あの不真面目人間が豪炎寺さんと同じ背番号だなんて!
何度見ても納得いかない。


「とはいえ…あの実力は本物だド」
『わかってる!だから腹立つの!』


分かっていてもそれでも頭は納得してくれなくて。
フィールドに立ってボールを持てば一変してボールをゴールに叩き込んでくれる。
でもフィールドから出てしまいさえすれば南沢はただの内申を気にする受験生。
あまりの切り替えの速さに何度私がビンタをかましてやろうと思ったか…!


『だから!真面目にサッカーに取り組みなさいよ!』
「は?お前に言われる筋合いはねーだろ。ちゃんと勝つ時には勝ってやってるんだし」
『その姿勢がムカツクの!』

「あー!お前らいがみ合うな!」


私が三国の大きなガッシリとしている腕に後ろから羽交い締めにされる。
女の私が抵抗できるはずも無く大人しくせざるを得なくなった。
目の前にいる南沢はべー、と挑発的に舌を見せて笑う。

腹 立 つ !!

ピリピリした私の空気を感じ取ったのか三国がおずおずと私の腕を開放した。
(殴るなよ、という三国の声が小声で聞こえた)
余裕の笑を浮かべる南沢の前に立ちはだかる私。
実はそんなに背の変わらない南沢とは視線がほぼ水平に交わることになる。



『なんで…』



ジッと南沢と睨み合い、そのまま声を漏らす。


『こんなやる気なくて雷門に泥を塗りそうなぐらいサッカーに関心はないし内申のことしか考えてない最低男なのに……』
「…オイ」


ちょっとキツくなった視線をものともせず、私は思いっきり南沢の胸ぐらを掴んだ。
そして胸に宿る疑問を思いっきり南沢にぶつける。




『なんでアンタばっか目で追っちゃうのよ……!』




ふざけた姿勢は許せない筈なのに。
南沢なんて大っ嫌いなはずなのに。
自分でもわからない気持ちは迷子のまま。
宙ぶらりんのままの中途半端な思い。

真面目に疑問をぶつけたはずなのになぜか南沢は一瞬目を見開いて、あろうことか思いっきり笑い出した。


『…喧嘩売ってんの?』
「いーや。お前って可愛いのなと思って」

『は、はぁ!?』


コ、コイツ人の話すら真面目に聞けないのか…!
怒りから震え出した拳を上げた途端掴まれる私の拳。
あっさりと掴まった手をそのまま引っ張られいつの間にやら視界は黄色いユニフォーム一色。




「…俺以外の奴なんか目に入らねぇぐらいもっと夢中にさせてやるよ」





だからそういうサッカーに不真面目なところが嫌いなのに。
なぜか私は抵抗できずに三国に引き離されるまでその腕に収まっていた。






不真面目な君と真面目な彼女

(お前ら…グランドで引っ付くな!)
(なっ…!好きで引っ付いてる訳じゃないわよ!)
(その割には抵抗してなかったけどな)
(…!)


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