じっと南沢さんを見つめて、その頭の高さを確認する。
…あ、やっぱり大分小さ…いや、その違…た、他意はない!


「オイ何俺見ながら挙動不審してんだ」

『はいっ!?べ、別に意外と南沢さんが小さいなぁとか断じて思ってないです、はい!!』
「…ほぉ」

『ひぃいぃ!』


くくく口が滑ったぁぁぁ!!
何で私ってこう馬鹿なのかな誰か助けて…!


「全部声に出てるぜ」
『嘘!?』


バッと口を塞いでみたもののきっともう遅い。
じりっと静かな怒りを秘めて迫って来る南沢さんの視線が痛いです。


「…つかお前の方が小せぇだろーが」
『いや…南沢さん一応男性ですし…痛い痛い!』

「一応ってなんだ一応って」


頭を体に似合わず大きな手で鷲掴みにされる。
正直ただでさえ小さい背が縮みそうです…!

じたばたしてみたら逆に遊ばれる始末。
うわぁぁん髪の毛ぐっちゃぐちゃだよ南沢さんの馬鹿!


『南沢さんの馬鹿…背も心も小さい男』

「喧嘩売ってんのか」
『滅相もないです』


女と男の差。
そりゃあ先輩の方が年上だし男の中では小さいと言っても私よりかは背も高い。
そんな小さな距離がもどかしくて。

ちょっと手を伸ばしてもギリギリ届かないような、そんな距離を感じることがある。

だからちょっと悪態をついてみたりしてるどこまでも子供な私。



『えいっ』



精一杯背伸びをして肩を無理に並べてみる。


「何してんだ?」

『…南沢さんとの距離を感じようと』


つま先で立っている、この痛みに感じる微妙な距離。

すると南沢さんはため息をついてギュッと私の頭を再び押さえつける。
痛いと言う間に地面と離れていた足の裏がぺったりと地面と対面した。



『だから…これ以上縮んだらどうしてくれるんです』
「いいんだよ。俺以上にでっかくなろうなんておもうな」

『……でも』


それ以上言葉を紡がせない、南沢さんの唇。
気づいたときには目の前に整った南沢さんの顔があって。
一瞬だけ触れたそれはすぐに離れていった。




「お前の身長並んだら俺のカッコがつかねぇ」

『…地味に、遠いです』
「そんな距離、今みたいに埋めてやればいいだろ?」




にやりと笑ってみせた先輩に、もう身長の差なんていいや、なんて。
そんな都合のいい考えな私でもいいかななんて思ってしまった。







0センチの距離

(距離なんて感じさせない)
(ちょっと私よりも高い、隣にいる貴方)


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