努力は報われないものだって知った。
貴方の隣にはいつも彼女がいて、彼女の隣にはいつも貴方がいた。



前々から知ってたよ。



だって彼女が貴方を好きだって知って協力したのは私だもの。
"友達だから"なんて薄っぺらい言葉。

私はただの偽善者だ。
そしてただの臆病者だ。
私がずっと彼を……拓人君を見ていたのに。
それすらも伝えることができなかった。

笑っちゃううよね。私って馬鹿。

言ってたことで変わったかも変わらなかったかもしれない。
それでも言わない事を選んだのは私なのに。
拓人くんと茜ちゃんが並んでいるのを見る度に私の握った拳からは血が滲む。
笑いあっていることが妙に輝いて見えて胸が苦しくなる。


汚い。


私の心は汚れている。

茜ちゃんが憎いだなんてそんな事考える自分が今本当に恨めしくなった。
いっそ嫌いだと行ってしまえれば楽なんだろう。
でも言えなかった。
自分に嘘をつけない、だなんてカッコイイこと私には言えないけど。

ただ怖かった。

今まで振り向いて貰おうと頑張っていた努力も、紡いできた友情も、全てが足元から崩れていくようなそんな気がするから。

結局私は想いを伝えられない弱虫。
打破する方法も考えられず仮初の自分を演じで生活をする道化。
酷く滑稽だ、と思わず笑ってしまう。



"貴方が好きなだけなのにな"



心には言えても言葉には出来ない自分。

指をくわえて眺めていることしかできない。
(もうこんな指なんて噛み契ってしまいたい)





ぽたり




力をいれた手から地が滴り落ちる。

緑色のグランドに染みた真っ赤な血。
こんなにハッキリと血は緑に映えているというのに。
足元を見なければそれは踏み潰されていくだけ。
私もそんなちっぽけな存在。
いつか乾ききって何事もなかったかのようにいなくなる。そんなサイクルの一部でしかない。



「名前…!血出てる」

『あ…ちょっと保健室行ってくるね。拓人くんに言っといてくれる?』
「うん。…気を付けて」


茜ちゃんに背中を向け校舎へと歩を進める。
その背中に突き刺さる2人の声に更に私の手から血は滲む。
私の歩く道にできる血の跡。

ぺろりと舐めた血は少ししょっぱい、涙と同じ味がした気がした。




I like blood
(まるで私は血の様で)


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