静かに白いドアを開ける。 抱えた花束を崩さないよう、ゆっくりと開けたドアの先には幼い頃から見慣れた彼。 『優一、入るよ……?』 今はベッドに眠る優一がそこにはいて。 京介くんを助けたあの日からずっと優一は入院をしている。 京介くんはずっと自分を攻め続けてる事だって知ってた。 そう。私は共犯者。 黙って見ていた私は許されざる罪の共犯者。 逃げることだってできた私が逃げなかった理由は一つだけ、でも決定的な理由だった。 優一がぐっすりと眠っていることを確認して、その整った顔に自分の顔を寄せる。 『…優一……』 その答えは単純明快。 私が優一を好きだから。 卑怯者だってわかってる。 逃げなかったのは、優一の側にいたかったから。 こんな罪を理由に優一の側にいる私は罪深いものだろう。 『私、馬鹿だよね』 瞳を閉じている優一には何も聞こえてないだろうけど。 いや、聞こえてないからこそ言えるのかもしれない。 面と向かって言う勇気のない臆病な証。 『好きだよ。優一』 せめて貴方を好きでいる事は許して下さい。 『…早く…諦めるから』 貴方に恋心を抱いてしまった幼き日の私を、 「それは困るな」 『っ…!?』 花束を机に置いて去って行こうと後ろを向いた時、不意に引かれた左腕に思わず振り返った。 嘘、まさか 『今の、聞いて……』 「あぁ聞いてた」 終わりだ。と頭にサイレンが鳴り響く。 やめて これ以上醜い私を見ないで…! 「でも俺も名前が好きだから。諦められたら困るな」 目を見開いて優一を見れば、優一は笑っていた。 昔と変わらない、あの笑みを私に向けていた。 『どうして優しくするの…?』 「名前が好きだから」 『私は卑怯な女なんだよ』 「俺だって卑怯な男さ」 『…そんなに優しくされたら…!私…私は……っん!』 掴まれていた腕をそのまま引かれて優一に被さるような形でキスをされた。 怪我であるとは言え入院している筈の優一に力で抗うこともできず、されるがままに口を塞がれる。 時が止まった様な、長かった様な、言葉にできない感覚。 ゆっくりと唇が離れた時、彼はまた変わらない笑顔で私を抱きしめた。 「諦めないで、もう一回俺を好きになってよ」 あなたに恋をしたあの日 (貴方にもう一度恋をしたこの日) ------- 企画に提出させていただきました。 ●● |