彼の頬についた小さな絆創膏。 昨日までなかったそれにまたか、と小さく笑みを漏らし隣の席のサッカー少年に話し掛ける。 『天馬くんまた怪我したの?』 「え?あぁ、うん。ちょっと特訓でさ」 たまにこうして絆創膏を貼る天馬くんを見かけては関心する。 確かにこの学校のサッカー部は有名で練習もそれなりにキツいと思うけどそれに加えての自主練。 天馬くんがどれだけサッカーが好きで真剣に取り組んでいるかがわかる。 そんな努力家な天馬くんが私は好きな訳なんだけど。 「また秋姉に無理矢理貼られただけだからホントにたいしたことないよ」 『秋さんは天馬くんの事心配なのよ』 「過保護じゃないかなー……」 『ないない。と言うかなんか天馬くんほっとけないんだもん。秋さんの気持ち分かるよ』 ボールを追ってグランドを駆け回る天馬くんの姿に私は一度犬の面影を見たことがあった。 ほら、あのボール投げて「取って来ーい!」ってヤツ。 (言ったら怒られそうだから言わないけどね) 『そういう施しは受け取っとくが吉だよ』 「そういうもんかなぁ…」 絆創膏が貼ってある頬を掻きながら口をつむぐ。 そんなどうでもいい仕種が妙に可愛く感じるのは私の幻覚で天馬くんの頭に生えて見える犬耳のせいだろうか。 違うと思ってもごめん天馬くん。やっぱなんか生えて見えるよ。犬耳。 「そんな俺危なっかしいのかな…」 『なんかね、天馬くんは思わず構いたくなっちゃうんだよ』 犬みたいで。 …言わなかった。言わなかったよ。 私はおもむろに鞄からあるものを取り出した。 そんな天馬くんに渡しておこうじゃないか。 『天馬くん、これあげる』 「?絆創膏?」 『そ、これで秋さんに言われる前に自分でできるでしょ?』 ペラリと差し出した絆創膏。 5つ程連なったそれを見つめて首を傾げる天馬くんに笑いかける。 でも、やっぱり天馬くんに怪我はして欲しくないな。 私は天馬くんにそう言って教室から出ていく。 きっとキョトンとした顔の天馬くんがいるんだろうな、なんて考えながら。 手渡しの愛情 (なんでキョトンとしてるかわかるって?) (だって私も言っててちょっと恥ずかしかったんだから) ●● |