ピピピ


「名前、ケータイ鳴ってるぞ」
『え、あぁ茜ちゃんからだー』

音に先に気付いた俺が名前に言えばポケットから取り出される賑やかなケータイ。
女子ってやつはなんでこうもキーホルダーだの何だのと付けるのだろうか。(酷いのじゃぬいぐるみみたいのまで付いてるぞ)
既にケータイに付けたと言うよりむしろケータイがキーホルダー扱いだ。
重量で言うなら絶対に本体よりも付属品の方が多いと言い切れる自信がある。
なのにそれを不自由ともしないのだから凄い。

最近は名前のケータイが一段と重くなったように見える。


「なぁ…キーホルダー増えてないか?」
『増えたよー!この前マネージャー全員でお揃いで買ったの!』


ほらコレ!と見せてくるが正直どれが今までのやつでどれが新しいやつなのかもわからない。
ジャラリと音をたてて目の前にぶら下がるケータイに一種の哀れみすら覚える。



「ハァ…」



思わず口から漏れたため息。
どうしてシンプルにできないものか。

タイミング良く自分のケータイが鳴ってそれを取り出した。
メールだから今すぐ開くこともない。
外見を見比べたら俺のケータイの軽そうなこと。
というかこれがケータイのあるべき姿だろうと思う。



『あれ?蘭丸そんなの付けてたって?』



名前に指差されて自分のケータイに付けられた硝子玉のストラップを見る。


「あぁ。この前フラッと寄った店で見つけたんだ」
『珍しいね、蘭丸が可愛いストラップ買うなんて』


指でそれを突いている名前。
小さく揺れる硝子玉を何度も突いては可愛いと呟いている。

なんとなくそれが気に入ったことが見て取れて、何だか思い通りになったなと思いながら俺は自分の鞄の中を漁った。



『蘭丸?』
「ほら、欲しいんだろ?」

『え?』



小さな包みに入った俺と同じストラップを名前に差し出す。
なぜバレたと言わんばかりの表情をしているがそれくらいすぐ分かる。


『わざわざ買っといてくれたの?』
「またそのコレクションが増えると思ってな」


名前が包みからストラップを取り出して手に取った。
光に反射して光る硝子玉を満足げに見つめてそれをギュッと握っている。
付けないのか?と問えば家で、と返されて今付ければいいのにと疑問が湧く。



『家でストラップの整理しなきゃ』

「整理?」
『そ!量減らすの』



何を今更、と口を開こうとしたら先に名前に口を開かれた。


『蘭丸とお揃いのストラップ付けるんだもん。他のに埋もれさせたくないでしょ?』


なら最初から付けるなよ。
突っ込みたくなったのを抑えて、俺はケータイを握ったままの手で名前の頭を小突いた。





お揃いストラップ

(ほら、だいぶ減ったでしょ!)
(…それでも多いだろ……)


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