「みーつけた!」



小さい頃、よく隠れんぼをして遊んだ。
思い返せばなにがそんなに楽しかったんだと思うが当時は楽しかったんだろう。

なぜかじゃんけんによく負ける俺はいっつも鬼で。
名前はいつも俺から隠れる側だったのをよく覚えている。


『見つかっちゃった〜』
「次は名前が鬼だからな!」

『もぅ…どうしてたっくんはすぐに私を見つけちゃうの?』
「わかるよ、だって……」


その先言った言葉を俺は覚えていない。
思い出そうとしてもなかなか思い出せず、軽いイライラが募る。
何だったか、考えた時にコツンと額に突かれる感覚。




『もしもーし、起きてますかー?』
「…起きてるよ」



そもそも寝てないしな。

机に伏せかけていた顔を上げれば目の前でブンブンと手を振る名前の姿があって、今しがた頭に浮かんでいた幼い面影が重なる。
変わらない関係のまま通り過ぎた月日はあっという間だった気がする。
中学生になった現在、クラスも同じな幼なじみはこうしてまた隣で日々を過ごしていた。



『じゃ、次の移動教室はバックれるからヨロシク!』



…とまぁ謎のサボり癖をつけて。
いつからかと言われたらいつの間にかとしか答えられないが、有難迷惑な話だ。
毎度先生に説明する俺の身にもなれと言ってやりたい。
言った所で変わらないだろうからいいやしないけど。



「神童、また名前のヤツサボりか?」
「あぁ。まったくこっちの身にもなって欲しいもんだ」
「だな」



授業が終わってから霧野に指摘されればその通りだと漏れるのはため息。


「探しに行ってくる」

「早く戻って来いよ」
「わかってる」


自分の教室に移動教室に持って行った教科書やノートを置いてもう一度教室から出る。
廊下に出てから左右を見渡しても勿論名前の姿はなくとりあえず廊下を歩いた。
いつも俺は名前を探す側。
悪い気はしない。
ただ、名前が側にいないのが妙に寂しくて。

足は何の意志もなく勝手に進んでいた。

これもいつだってそうだ。
俺の足はいつの間にか動いている。
誰も見つけられない所にいたって、見つけるのはいつも俺。





「みつけた」





誰がこんなトコまでくるだろうか。
屋上にある貯水タンクとタンクの間にある小さな隙間。
隠れるようにしてそんな隙間で悠々と昼寝をしている。



『ん…あれ、たっくんオハヨー』
「おはようって時間じゃないがな」



目元を擦っている名前にまた昔の面影を見た。



『だっていつもたっくんが私を見つけて起こしてくれるから』


さっきまで続きの思い出せなかった言葉の続き。





―『もぅ…どうしてたっくんはすぐに私を見つけちゃうの?』
―「わかるよ、だって……」






「好きだから、か」

『え?』
「いや、なんでもない」



俺が忘れてたこの言葉を名前が覚えてるとは思わない。
こうしてまた毎日のように名前を探し続けて、俺みたいに思い出すまではこの続きは言わないでおこう。



「ほら、行くぞ」
『はーい』



今度はお前に見つけて欲しい。
いつになるかはわからないけど、それまでずっと俺は名前を探し続けてやるから。






見つけて恋心

(気付くのはいつの日になるのか)


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