『先輩先輩、ちょっと手出してください』
「手?」

年下ではあるが彼女である名前にそう言われ右手を広げてやるとえい、とと言う可愛い掛け声と共に重なる名前の手。
自分の手より一回り小さなその手に思わず三国はドキッとした。


『やっぱり大きいですね』


ギュッと軽く力を込めてその手を握る名前は穏やかな笑みを浮かべている。
少し骨張った大きな手。
努力の証か、小さなマメがあったり皮が固い所がある。
逆に名前の手は細く、三国はこのまま自分が本気で握り返したら折れてしまうのではないか、とすら思った。


「止めとけ、気持ちいいもんじゃないだろ」


自分の手がお世辞にも綺麗と言えない事は自負しているつもりだ。
それでも彼女は三国の手を握り事を止めない。


『私は好きです。三国先輩の手』
「え?」
『大きくて、暖かくて、かっこいいです』


穏やかな笑みを浮かべたまま、名前は語る。



『あのゴールを守ってる、皆を守ってるこの手が私は大好きですよ』



彼女は知っていた。
練習熱心な三国が練習時間外にも人知れずキーパーの練習をしていたことを。
努力の末に破られたゴールに涙を流した事があったのを。



『この手は努力の証じゃないですか。三国先輩は誰よりも何よりもかっこいいです』



グローブで隠された手の下にある証。
普段なら気付かない所にこそ、ささやかなかっこよさがある。
だから名前は三国に惹かれたのだ。

引っ込めていた三国の左手を右手と同じく指を絡める。
少し照れ臭そうだったが勿論嫌な気がする訳もない。



『だから先輩』
「なんだ?」


一陣の風が吹き、名前はその流れに乗るように囁いた。






『この大きな手でゴールだけじゃなくて私も守って下さいね』





三国は笑って当たり前だろ、と重ねられた左手の薬指に口付けた。








ゴールと私の守護神

(そんな貴方が大好きなんです)


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