別に不便と思ってる訳じゃない。
訳じゃない…けど…



「よー名前!今日もちっさいな!」

『うるさいバ海士!!』



認めたくない事実。
…私は身長が低いです。

海士なんかが横に並ぼうものなら歴然たる差が生まれる。
爽やかに言ってのける海士が腹立たしい。
バ海士め笑うなら身長よこせ。


「まぁまぁ、牛乳買ってやるから落ち着けって」
『…イチゴ牛乳だからね』
「りょーかい」



牛乳は嫌いじゃない。(むしろ好き)
だからこうして買収されてやる訳だけどなんで牛乳飲んでるのに背は伸びないんだろう。
せめて付くべき所に着いて欲しい所。
どこもデカくならないってどういうことなの。

購買への行き道、悶々と思考するも悩んでる間に到着。



「おばちゃん、イチゴ牛乳ね!」



既にポケットに入れてた百円(既に私を牛乳で買収する事前提に考えられてるのが腹立つ)でイチゴ牛乳を受け取る。
おばちゃん笑ってた。絶対顔覚えられてる…!

ほいっと投げられたイチゴ牛乳を受けとって、ストローの袋をちぎった。



「おばちゃん笑ってたなー!」
『…バ海士が牛乳で買収するからでしょ』



やっぱりバ海士でも気付いてたか。
そんなとこ見てなくていいってば。

ストローを飲み口に挿してイチゴ牛乳を堪能する。
やっぱり美味しい。
これで背が伸びれば何の文句もないのに。



「名前さぁ、そんなにちっさいの嫌か?」

『嫌』



キッパリと言える。嫌。



『この前なんか小学生と間違えられたのよ!?しかも低学年!』
「見えなくもないよな!」
『…殴られたい?』



悪意ない言葉に悪意を感じざるを得ない。



「でもさ、ちっさくたっていいことあるって!!」
『なによ小さくて得することって!』

「例えば」





ふわり


目の前に海士の顔。
口内いっぱいにイチゴ牛乳の味がする中、塞がれた私の唇。

うそ、これって





「俺とキスしやすい、とかさ!!」





もう海士の馬鹿。
…明日からイチゴ牛乳飲めないじゃないの。






小さなイチゴ味
(…海士)
(んー?)

(私、明日から牛乳じゃなくて紅茶飲むから)

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