典人はいっつも機嫌が悪そうな顔をしている。
昔から無愛想な顔つきではあったけど(私と典人幼なじみです)ここまでではなかった。
サッカーしてる時はあまり表には出さないけど楽しそうで、嫌なことがあれば機嫌が悪くなる、ちゃんとした感情表現ができていた筈だ。

なのに最近私が近付くとすぐに機嫌が悪くなる。
私なんかしたかな…?



「…んだよ名前」
『んだよって…幼なじみにそれはないんじゃないの?』

「うっせ」



プイッとそっぽを向く典人。
私はため息をついて隣のクラスに向かった。
私の中で癒しとも言われる霧野くんの元を目指す。
もう、典人のバカッ。




『聞いてよ霧野くん。また典人に冷たくあしらわれた』
「…今日で何回目だよ」
『3回目くらい?』


「5回だ。毎度毎度休み時間にこっちに来るな」



霧野くんにまで怒られた……。
もーどれもこれも典人のせいなんだから。



「なんで毎回俺の所来るんだよ」
『だって…霧野くん優しいもん』
「…そーゆーことしてるから倉間の機嫌が悪いんだよ」
『え?』



ダンッ



何の音だろうと振り返るとそこに立っていたのは



「戻るぞ名前。邪魔したな霧野」
「頑張れよ」

『え?え?』



仁王立ちで現れた典人に腕を引っ掴まれてずるずると引きずられる、私。
なんだろう、典人の機嫌がさっきより悪い。2割増しぐらいで悪い気がする。
無言で廊下を歩き、教室へと帰還した。
そこへ来てやっと典人は立ち止まって、腕を放される。


「……なんで霧野んとこ行くんだよ」
『だって典人がうるさいって言うから…』
「バカ」
『な、なに!典人が言ったんでしょ!』


そこまで言って典人が押し黙る。
下を向いてちょっとバツが悪そうな顔をして。
どうかしたのか、顔を覗き込むと勢いよく顔を反らされた。
えぇー…傷付くなぁ……。


「…俺がうるさいって言っても、いなくなるな。勝手に霧野んとこ行くな」
『はい?』


それは言ってる事と逆じゃあ……。
思った時にピンときた。
それで霧野くんが言ってたことも辻妻があう。


『ねぇ典人』
「なんだよ」

『私の事好き?』


答えはこれでハッキリする。




「嫌いだ、バーカ」









典型的なあまのじゃく

(嫌いの反対、好き)


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