学生の財布事情なんてたかが知れてる。
だからこそバイトがあったり思いがけない収入には喜んだりするもの。
でも中学生である私達は勿論バイトはできない。



『ねぇ拓人、何枚か写真撮らせてくれない?』
「いいけど…何する気なんだ?」
『いや、ちょっと……売ろうかと思って』
「却下」
『なんでー!』



茜ちゃんに言い値で売ってあげようと思ったのに!
それで焼き増しした写真はファンの子に売り付けて……ごほん、ファンの子の萌えライフに貢献してあげようと思ってたのに!


「どうせロクな事にならないだろ」
『今月ピンチなの!私を助けると思って!』


手を合わせて拓人にせがんだ。
私の今の財布の中身は雀の涙。
それでも拓人はため息をついて私にお説教をかます。

節約しない方が悪いとか儲けに他人を使うなとか。

毎月月末になると恒例になる説教には聞き慣れたものだったり。



「だいたい、なんで他人に売るんだよ」
『だって…拓人カッコいいから儲かるんだもん』
「写真は手元に置いとくもんだろ」



そりゃそうだけど、
……実は拓人の写真の一部はコレクションしてるなんて言えない。
サッカーしてる所も、日常のちょっとした一コマも。
ケータイのカメラだったりちゃんとしたカメラだったり、それはいろいろだけど変わらない「拓人」という被写体。


『拓人を、撮りたいの』


売るって言う事を盾に写真を撮る私はバカかもしれない。
拓人ももう一回私にため息をつく。


「名前、ケータイのカメラ起動して貸してみろ」
『ケータイ?えっと……はい』
「で、ちょっとこっち来い」
『拓人?』


何するんだろうと思ってたら拓人は腕を伸ばして私達が写るようにカメラを構える。


"はいチーズ"
『っん…!?』


パシャ


シャッター音とともに塞がれた唇。
私のケータイに収まった1枚の写真。


「これは売るなよ?」


誰が売るもんですか!!






プレミア付きの私専用写真

(お財布のピンチなんてどうでもよくなっちゃったよ!)

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