―♪………〜―……



聞こえてくるどこか知っている音はどこか懐かしい。

分かる。これは拓人の音だ。

綺麗で、力強くて、でも裏にある誰にも見せない弱さがある。
私だけが知っているその音はとても心地がいい。
ずっと聞いていたいと思ったその時、音がぷつんと途切れていく。
小さくなっていく音はやがて聞こえなくなって。


『拓人っ!』


私は思わず手を伸ばした。









ガバッ

『……ゆ、め…?』



じとり、パジャマと前髪が汗ばんだ肌に引っ付いている。あぁ寝つきが悪い。
もう一回寝ようとしたけれど一度冴えてしまった頭は寝ようとしてくれない。

途端に襲ってくる不安。

音と共に消えていった拓人に無性に会いたくなった。
枕元に置いてあったケータイを手に取って着信履歴の一番上を選ぶ。



プルルルル



早く出て欲しい。はやく、はやく






「名前?どうかしたのか?」


いつも通りの拓人の声。
毎日聞いている筈なのにこの時ばかりは安堵の息が漏れた。



『…………拓人は…どこにも行かない?』



我ながら突然でバカな質問だと思う。
それでも今は言葉が欲しかった。
私を安心させてくれるその声で。


「名前、また変な夢でも見たんだろ?」
『……うん』

「大丈夫。俺はどこにも行かない」


拓人にはバレバレみたいだった。
私の欲しい言葉を私の望む形で言ってくれる。
さっきまでの不安なんてどこかに消えていった。


『ね、拓人』
「今度は何だ?」

『大好き』



きっとケータイ越しに顔を赤くしてるんだろうな、と思いつつ「俺もだ」と返してくれる拓人の優しさを感じで私は彼の奏でる音を求めるの。





真夜中0時。その声を聞く時
(君の声が聞きたくなるの)

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