『南沢篤志!今日こそ決着をつけてやる!』

「……俺今着替え中なんだけど」
『そんなの見ればわかる!』

いや辺りの男子が困惑してるの気づけよ上半身裸の奴だっているぞ。俺もだけど。

『早く着替えろ!』

俺の目の前で腕を組んで仁王立ちする苗字名前は最近体育の時間の前になるといつもこうだ。
いち早く自分は更衣室で着替え、なりふり構わず教室のドアを開ける。

コイツには恥ずかしいという感情がないのか。
早くと言われたが特に急ぐこともなく普通のスピードで着替えを終えた。
途端に女とは思えない力で腕を引かれ教室を出る。
この細腕のどこにこんな力があるんだろうと不思議に思うがそんな力があるからこそこうして体育のたびに俺は連行されるのだろう。


発端はこの前の体育の授業、男女混合でやったサッカーが始まり。
3年生で評定の関わるこの時期に勿論俺が手加減する筈もなく。
その時に俺がボールをたたき込んだゴールを守っていたのが苗字だった。
どうやら相当自信があったらしい。
プライドの高く、勉強もスポーツもできることで有名な苗字がそんな俺に挑戦状を叩きつけるようになるのは少し考えればわかる。
面倒なことをしたと思ったのは後の祭り。

(あぁ授業が始まった)




『こい南沢篤志!』


周りの男子達も気を使ってるのか自分が関わるのが面倒なのか俺にボールを回してくる。
ドリブルで相手チームを抜きながらため息をつくともう目の前に迫るゴール。
体に染みついた感覚は手を抜くと言う事を知らず、自分の力をボールにぶつければそのボールはあと数ミリというところで苗字のてに届かず、ピーッとホイッスルの音が鳴った。


『あーもう!あとちょっとで届いたのに!!』
「そう簡単に止めさせねーよ」


ゴールに突き刺さったボールをセンターサークルへ投げる。
飛び込んでボールを止めようとした為苗字は泥だらけだった。



「だいたいな」


立ち上がった苗字の背中についた砂を払う。




「そう簡単に好きな女に止められてたまるかっての」



そのまま顔を近づけて耳元で言ってやれば苗字はバッと耳を押さえて顔を真っ赤にしている。
瞬間、試合再開のホイッスル。
俺はフッと笑ってフィールドへ戻って行った。



『私がボール止めたらこっちの話も聞いて貰うんだからね!』


背中に届いた言葉に一度後ろを振り向くと、真っ赤なままでこっちを見ている苗字の姿が。
―さぁ、もう一回ゴールでも決めに行くか。





ゴールにシュート!!

(い、言い逃げなんて卑怯だ南沢篤志…!)
(絶対に止めてやるんだから!)


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