「なんとかなる」って言って何事にも前向き。
ここだけ言えば良く聞こえるけど悪く言えば無鉄砲。

そんな私の幼馴染はサッカーに夢中なのです。






『天馬っ!葵に聞いたけどもうサッカー部でやらかしたんだって!?』



クラス発表で隣のクラスだった私は葵の報告を受けて天馬のクラスへと滑り込んだ。

「何だよやらかしたって!……まぁちょっと色々あったけど…」
『だからそれを言ってるの!傷だらけじゃない!』

絆創膏の貼られた頬を擦ればイテッと声を上げる天馬。
ほらやっぱり痛いんじゃないの!

『もう!あんま無茶しない!』
「大丈夫だって!それにサッカー部も廃部は免れたし!」

本当に嬉しそうに笑う天馬を見てると少し怒る気も失せてしまう。
自分の楽しみにしていたサッカー部が廃部にならなくて嬉しいのは分かるけど。
毎回毎回それを見ているこっちの身にもなって欲しい。



『心配するこっちの身にもなってよ』

「……名前…?」
『いっつもいっつも"なんとかなる"って……なんとかならなかったらどうするの?』


握った手に力が入る。
我ながら珍しい事だと思う。
天馬も少し目を丸くしていたけど、今の私にはそんなことどうでも良かった。

目に見える傷が痛々しくて

何もできない自分が酷くもどかしくて



「…ごめん」

『私は、謝って欲しいんじゃ…ない、の』
「うん」
『ただ…いつの間にか天馬がボロボロになるのが嫌で』
「うん」



駄目、言葉がうまく纏まらない。
口をつぐんで黙っているとぽふ、と不意に頭に感じた重み。
天馬の手だ、と気が付くのにそう時間はかからなかった。


「じゃあさ…名前がちゃんと見といてくれ」
『……怪我したらちゃんと言う?』
「言うよ」


泣いた子供をあやす様な手つきで髪を乱される。
(天馬の不器用、なんて言わないけど)


『約束破ったら許さないから』
「大丈夫だって」


今度はなんとかなるって言わなかった。
約束したからにはずっと見といてやるんだから。



I look you forever
(いつまでも貴方を見ている)

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