暑い夏に手放せない冷たい飲み物。
今日も今日とて持参したペットボトルのお茶はなくなり、購買で買ったジュースは本日2本目。
それでも常に汗となって体内の水分はなくなっていく。
摂取した分が全部なくなるなら意味なくないかとも思うけど喉は渇くし飲まなかったら飲まなかったで体を壊すだけって…つくづく人間って面倒だ。


『南沢先輩どうしてそんな涼しげなんですか…』


隣で涼しげにドリンクを飲む先輩に問い掛ける。
私の方がジャージを着ているからと言っても走り回っている分発汗量は明らかに多いはず。
その筈なのにどうしてこの先輩は汗一つかかないで涼しげにしているんだろうか。


「俺だって暑いんだけど」
『嘘ですそんな涼しそうな顔して』
「どんな顔だよ」


今の先輩の顔がです。
言う気もなくす暑さに、先輩に向けて出た言葉は『暑い』だった。
先輩達に渡す用のドリンクではなく先程自腹で買ったポカリを取り出す。
水で薄めていない原液のポカリは幾分甘いけど渇いた喉を潤すには十分だった。
残り少ない3本目のジュースを飲み干す。
生き返るとはまさにこんな時を指すんだろうと思った。


『ぷはー……』
「自分達の分は作らないんだな」
『マネジの分は部費に含まれてませんー……だから自腹なんです』


南沢先輩は興味が無さそうに(というか実際興味ないと思う)返事を返す。


『もう一本買ってこようかな…』


まだ部活の時間はたくさん残っているが私のただでさえない体力は飲み物を飲んだばかりだと言うのに既に水分を欲しがっている。

栄誉あるサッカー部のマネージャーなのに情けないぞ私。

葵ちゃんに一緒に買いに行かないか聞きに行こうと思った時、おもむろにに腕を引っ張られた。



「これやるよ」
『んっ?』



不意に口に何かを突っ込まれたと思ったら口内に流れてくる皆の為に作った甘さ控えめなスポーツドリンク。
あぁこれ南沢先輩のスクイズボトルだ。

『あ、ありがとうございます』

お礼を言ったら、南沢先輩はどこか楽しそうに練習に戻って行った。
そしてそこで気付いた。



このスクイズボトル、さっき先輩が口付けて飲んでたやつ………!!



折角下がってきた体温がまた上がってくる。
先輩、分かっててやったな。
それで後で絶対からかわれるんだ…!

私はそれまでにできるだけ体温を下げておこうと、結局本日4本目になるジュースを買いに行った。




確信犯は犯罪です
(南沢先輩のいじわる!)



――――
スクイズボトル:つまりはスポーツドリンクボトルのこと

_


- ナノ -