静まりかえった教室に授業を行う先生の声と黒板ににチョークを滑らせる音のみが響く。
授業をまじめに聞く者もいれば夢の世界の住人になる者もいる。
この授業の先生は生徒が寝ていても起こさないこちらからすればありがたい先生だった。
まぁ後に寝ていた分が自分に跳ね返ってくると言う事が分かっているからであろう。

無機質なチャイムが鳴り、寝ていた数名も体を起こす。
蘭丸は隣で机に突っ伏して眠る名前に目を向けるが、彼女はいまだ夢の中の住人らしい。


「おい名前、授業終わったぞ」


んー?と眠たげに声を上げてゆっくりと顔を上げた名前。
目もしっかりと開いておらず、髪の毛もボサボサだ。
先程まで寝ていた事が手に取るようにわかる。

『蘭丸おはよー…』
「おはようって時間帯じゃないけどな」
『まぁまぁ細かい事は気にしない。ノート貸して!』
「ん」

名前は手渡されたノートを写し始める。
休み時間にやるくらいなら授業中にやればいいのにと思うのだが何故そうしないのか、真面目な者にはわからない考えが巡るが面倒なので聞いてみる事に。

「どうして毎回授業中寝るんだよ。後が面倒なだけだろ?」

ノートを写す手を止めず視線もノートに向いたままで名前は答えを返した。

『だって蘭丸のノート分かりやすいんだもん』
「…それだけか?」
『うん。あと授業中話聞いてたらつい寝ちゃうしそれなら蘭丸のノート写した方がわかるから』

まさか自分のノートがそんな風に頼られていたとは。
言われてみれば名前は授業を聞かないわりにテストの点は蘭丸とさほど変わらない。

『と、言う事で次の授業も寝るから起こしてね』
「はいはい、オヤスミ」
『おやすみー』


キーンコーン


まるで図ったかのようなタイミングでチャイムが鳴り、先生がやってくる。
挨拶、出席確認を済ませた所で名前は机に突っ伏し始めた。
今度の先生もさほど厳しくないと言う事を熟知している名前はもうお構いなしに寝息を立て始め、既に夢の中へ行ってしまったようだ。

蘭丸はそんな名前を見つめ、いいことを思いついたと言わんばかりにおもむろにノートを綴り始めた。





―――――――――――
――――――――
―――――




「名前、」
『もう終わり…?』
「終わり。ほらノート」
『ありがと』


ノートを渡した蘭丸は何も言わずに教室を出て行く。
どうしたのだろうと思いつつ自分のノートを開きそして蘭丸のノートを開いた時、バッと蘭丸の出て行った教室のドアを見つめ名前は彼が出て行った理由を知ることになった。



ノートの端に綴った告白

("好きだよバーカ")



_


- ナノ -