人は無い物強請りとはよく言ったもので。


『蘭ちゃーん!髪触らせてー!!』
「またか」
『うん!』

櫛を持って隣のクラスに滑り込む。
目的は蘭ちゃんのサラ毛。うわぁぁまじアジアンビューティー!
ん?でもピンク髪だからアジアンじゃない?
じゃあどこのビューティーなんだ蘭ちゃん…

『蘭ちゃんの国籍って日本?』
「は?」

ヤベ、つい本音が。

『ま、いいや。蘭ちゃんのサラ毛ー!!』

細く長い髪に櫛を通しその感触を堪能する。
休み時間の私の唯一の癒しだ。

「髪なんか自分の梳いたらいいだろ」
『それじゃ意味ないの!私の髪くるっくるで太いんだもん』

言われた試しに自分の髪に櫛を通してみたものの、見事に引っかかってくれた。ちくしょー毛抜けたよ。


『この櫛の通り具合が気持ちいいんだよ蘭ちゃん。クルクルパーの私にとってのロマンだよ』

スルッと通り抜ける髪。
うん。その髪で男なんてサギだ。嘘だ。
私の髪と取り換えて欲しい。

「名前」
『んー?』
「お前、他の奴の髪触りに行くなよ」

後ろから蘭ちゃんの髪を梳いていた私からは赤くなった耳が丸見えだった。
可愛いなぁ…。やっぱり男の子だなんて嘘じゃないの。

『蘭ちゃん嫉妬ー』
「うるさい」
『でも大丈夫だよ』
「…?」

私は梳いた髪をツインテールのに戻して後ろから蘭ちゃんに抱き着いた。


『蘭ちゃんの髪弄るのは私だけの特権なのです』



Touch My Hair!

(じゃあ蘭ちゃんも他の人に触らせないでね!)
(…当たり前だろ)


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