私はウジウジしてる人が嫌いだ。
それなのになぜ私の隣にいる彼はこうもマイナス思考なのだろうか。
そしてなぜ、なんやかんやでそんな嫌いな部類の人と長く付き合っているのだろう。

「はぁ…」

『鶴正、ため息』
「あ、ごめん…」


ほらまた謝る。

口を開けばネガティブな言葉か謝罪の言葉しか出てこない。
もうちょっと明るい話はできないかとも思ったけど饒舌で明るい鶴正、ある意味見たくないから却下。


『またサッカーの事?』
「……もう終わりだよ。フィフスセクターに目を付けられたし…サッカー部は…」


始まった鶴正のネガティブワールド。
ずんと重い空気が立ち込め鶴雅の顔が下を向く。
発せられる言葉はまるでこの世の終わりかのような暗さ。

鶴正とは違うため息が漏れる。
そのため息に反応した鶴正が顔を上げて私の顔を伺ってきた。


「お…怒ってる?」


恐る恐る聞いてきた鶴正。




『怒ってる』



スパーンと言ってやれば更に鶴正に暗いオーラが。

でも今回はちゃんと聞いてきたから少し優しくしてやろう。
(前回似た様な事があった時は無言で逃げられた。)


『フィフスセクターに負けたからって何?こてんぱんにやられたって皆は全然カッコ悪くなんかないよ』
「でも……」
『ウジウジしない』
「う…」

言葉は言葉で黙らせる。
鶴正にはこれが一番効果的なことはよく知ってる。
椅子に座っている彼を立ったまま見下ろしている私は大層怖く見えるだろう。

ちゃんと言ってやらないと鶴正の為にならない。
言うならば愛の鞭と言い張ってみる。


『大体フィフスセクターってサッカーの英才教育受けてた人達でしょ?はっきり言って勝てる訳ないじゃない』
「そりゃあ…そうかもしれない……けど」


コイツまだ言うかと言わんばかりに鶴正の両頬を引っ張ってやった。
おぉ柔らかい。



「いひゃい」

『だーかーら、ウジウジしないの。………そのままの鶴正が好きなんだから』



あ、口が滑った。
ぽかんと両頬を引っ張られたまま唖然としている鶴正。
なんだか私が鶴正と一緒にいる理由がわかった気がする。




ほっとけない、そんな貴方に

(ほーら部活行くよ!)
(え、あ、名前!?)

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