中学3年生だからといって明確な進路が決まっているわけでもない私。
ぼーっと世間の波に流されて進学して、なんとなく仕事に付ければいい、それぐらいの考えしかない。

空を仰いで何も考えないでいる時間が一番好き、今はそんな感じだと思う。
親にはあまり考えなしに生きていたら後悔するんじゃないかと言われたけど正直私はそう思ったことはなくて、自由に生きているのは楽だと思っている。
将来の夢は特にない、未来予想図だって考えちゃいない。


『篤志は将来の夢ってある?』


隣でのんきに本を読む篤志に問いかけてみた。
私と同類の匂いのする彼にはてっきり夢がないんじゃないかと予想。
あ?と本から視線を外して返事をした篤志に返事を期待する。


「別に…稼ぎのいい仕事ついて普通に暮らすってぐらいだろ」
『あ、一応夢あるんだね』
「…夢ってレベルでもない気がするけどな」


そうなんだけどとりあえず道が決まってるってことが少し羨ましい。
私は別に仕事とかも何にも考えてないし。

篤志成績いいし公務員とかもなれるんじゃないかなぁ…サッカー上手いしそっちの道もありかも。
ま、本人的には内申目当てでサッカーやってるって言ってたけど勿体ないと思う。
折角実力があるからそっちの道でも何かを目指せばいいのに。


『夢か〜……才能とかも何もないしな…』


勉強もスポーツも平平凡凡な私。
一応志望して出している高校もレベルは普通って感じ。


「やりたいモンは?」
『ない』

「興味あることは?」
『特に』

「……」


悪かったわね何の趣味もない寂しい女で。
無言になってしまった篤志にこちらも無言の威圧を向ける。


「お前、これからの行き先ないならさ…」
『ん?』


篤志がまた本のページをめくりながら小さな声で呟く。
ちょっと聞き取るのが微妙で思わず聞き返してしまった。
顔を合わせようとしたけど生憎本が邪魔で見えたのは小難しそうな本の表示だけ。

なかなか続きを言わない篤志に首を傾げた時、本当にこの近距離私にしか聞こえないような声が聞こえた。



「俺の嫁に来いよ」



思わず目を見開いたがやっぱり本が邪魔で篤志の顔は見えないまま。
でもなんとなく予想はつく。きっと珍しく顔を赤くしているのではないか。
そう思うとなんだか篤志が可愛くて。

すましたフリして本を読む篤志に寄り添って私はそんな未来もいいかなんて思ってしまった。





永久就職先

(篤志のお嫁さんか…それもいいかもね)
(!)

(これからもよろしく未来の旦那様)

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