※ゲームネタバレ注意
白恋との試合前で錦は帰ってきてる





























倉間とはなにかしら折り合いを付けることが苦手な私は顔を合わせる度に喧嘩暴言暴力の嵐。
まさに反りが合わない、とでもいうのだろう。
だが今、そんな倉間が私の目の前で珍しくため息をついている。


『…なによ。アンタがため息なんて珍しいわね』
「うっせーよ。つかなんでお前がこんなとこいるんだっつーの」

『私が河川敷にいちゃ悪い?』


私がここに足を運んだのは本当にたまたま。
気まぐれにここに来たら倉間がいた、ただそれだけの話。

いつもなら今の私の台詞に即答で"悪い"とでもいいそうなのに、今日の倉間は本当に珍しく何も言わない。
なんか変なものでも食べたのだろうか。
言ってやればまた討論になるか…いや、今の倉間にはなにを言っても無駄な気がする。


『なんかあったの?』


我ながら、私からこんな言葉が出るのも珍しい。
普段の倉間になら気持ち悪いと一蹴されるであろう台詞だ。


「…一年が練習してるの見ると悔しいんだよ」
『なんで?部員も増えたらしいし、最近勝ててるんでしょ?いいことじゃない』


こう見えてというか見たまんまというか、何事にも首突っ込みたがりな私はフィフスセクターだのの話も知っていた。
雷門のサッカー部が革命を起こそうとしてることも部外者なりに知っているつもりでいる。


「俺、今まで何してたんだろうって。どうせ勝敗は管理されてるんだから意味ねーって…言い訳にしてさ…ちゃんと練習してなかった」
『確かに、あれは真面目とは言い難かったわね』
「…」


一年の時。
私が倉間と最初に大喧嘩したのはサッカーのことだった。
兄がサッカーをしていた私は昔からサッカーが大好きで。
中学に入ったらマネージャーやるんだって思ってた矢先、あの堕落っぷり。
倉間と取っ組み合いの大喧嘩して入学早々校長室のお世話になったのは今となってはいい思い出だ。
フィフスセクターのせいだとしても、サッカー部に幻滅した私はマネージャーにはならなかった。
本気でサッカーしないのが許せなかった。


「俺、やっと本気で勝ちたいと思えるようになったんだ。でも…錦も帰ってくるしさ、俺もうお払い箱かもなー」
『自分でがそう思うなら間違いないなくアンタはお払い箱ね』


お世辞にも口数の多いとは言えない倉間がだんまりを決め込んだようだ。


『せっかく本気になったのに、諦めるの?』


何も答えない、沈黙という答えは最も狡いものだと私は思う。
イエス、ノーを言えば済む話。
意思表示ができる術を持ち合わせているのにそれをしないというのはなんとも情けない。
思わず私の口から漏れたのは長い長いため息だった。


『アンタの嫌いなところその1、管理されてるからって前みたいにサッカーに本気にならなかったとこ。
その2、本気になったらなったで今みたいにウジウジするとこ』
「…今も昔も嫌いじゃねーか」
『えぇ嫌いよ』


スッパリ。
だって本当の事だし取り繕いようがないんだからしょうがない。
ただし、言いたいことはこれだけじゃないの。




『唯一、私が好きになった倉間はサッカーに対して真剣で、でも心からサッカーを楽しんでた倉間なんだから』




恥を忍んで言ってやった言葉に、倉間は唖然とした表情を浮かべていた。
さぁ、私にこれだけ言わせたんだから頑張ってよね倉間クン?



好きと嫌いの狭間で

(うん、もう心配なさそうだね)
(何してんだ吹雪)
(あ、円堂くん。青春の1ページの覗き見さ)

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