誰よりも君を見ていた私だから。
悲しい時も嬉しい時も一緒にいたからわかるんだよ。

フィールドを翔るナナちゃんはずっと生き生きしてるもの。
確かに1軍の仲間入り出来たことは嬉しがっていたけれど、ナナちゃんはどこか寂しげだった。
例え2群であってもあのチームはナナちゃんが自分が作り上げてきたチームだから。


『ナナちゃんよかったね』
「…その呼び方で呼ぶなって言ってるだろ?」

『そんなこと言ったって、嬉しがってる顔隠せてないよ』


緩んでる頬をつついてやれば図星だったのか押し黙るナナちゃん。
そんなんだからナナちゃんはナナちゃんのまんまだって言うのにね。


『石狩くんや向坂くん帰ってきてくれたの喜んでるくせに』
「そりゃあ…戦う仲間が増えるのはいいことだろ」

『ナナちゃんってば素直じゃないね〜。私がどういう意味で言ってるかわかってるくせに』
「…うるさい」


いまだ頬っぺたをぷにぷにしたままに言ってみればちょっと頬っぺたが膨れるかなーなんて思ったけど膨れてはくれなかった。
ちょっと残念。と私が頬を膨らませてみる。
すると反撃の如きナナちゃんの頬っぺたつんつん攻撃。
あぁもう私はナナちゃんみたいに頬っぺたぷにぷにじゃないからやめてっていつも言ってるのに。


『なにするのさ』

「名前もやってるだろ」


向かい合ってお互いに頬をつつき合ってる様はなかなか滑稽なものだと思う。
それでもナナちゃんが離さない限り離すつもりはない。

こうして笑ってるナナちゃんを見れるようになったのはこのサッカー部のおかげだ。
負けずに信じて頑張ってきた、ナナちゃんが掴み取った笑顔。
セカンドのマネージャーとして傍らで見てた私には表情の移り変わりがよくわかった。
すごく不安で、何を信じていいのかわからないような顔をしていたナナちゃんはこんなに変わってくれたんだから。

誰よりもセカンドというあのチームに誇りを持っていたのはナナちゃんだったもん。


『ナナちゃんちゃんと笑えてるね』
「…名前がずっと傍にいてくれたからな」
『……あれ、ナナちゃんが素直だ』

「ここは黙って聴いてるところだろ」


ナナちゃんの手が頬から離れたから私もナナちゃんの頬から手を離す。
黙って聞いてろ、と言われたので私は黙ってナナちゃんを見つめておくことにした。
コホンと咳払いをしたナナちゃん。
少し私から目線を外しちゃう辺りやっぱりナナちゃんは可愛いと思う。


「名前が支えてくれたからここまで来れたんだ。…だから、その…ありがとう」


そう言ったナナちゃんのさっきまで触れていた頬はいつの間にか真っ赤に染まっていた。







赤く染まる頬

(可愛いと思っていたナナちゃんに)
(そんなの、私まで恥ずかしくなるでしょ)

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