午後6時。

練習も終盤であり片付けやクールダウンを各々で始めた頃。
何人かは既に部室に向かったようだ。
グランドには数人の姿しか見受けられない。
汗だくでヘトヘト。
うなだれながら片付けをする中、こんな時の癒しがやって来る。



『海士ー鶴正ー典人ー!差し入れー!』



来た!

目を光らせ3人が振り返れば、大きめのタッパーを持って走って来る苗字の姿。
苗字は3人と同じクラスで、調理部に所属しているからと言うことでよくこうして差し入れに来るのだ。


『今日の差し入れはレモンの蜂蜜漬けだよ!』

「俺いるー!」
「あっ、てめ浜野!」


倉間の待ったも聞かず浜野がいち早く元気を取り戻し、さっきまでの疲れはどこ行ったと言わんばかりのスピードで走り出す。
貰った。浜野が確信した時それを追い越し、横を駆け抜ける人物が1人がいた。



『鶴正、相変わらず足早いね!』
「まぁ、ね。貰っていい?」

『どうぞー』



サッカー部1の駿足を舐めていた。
多少のスタートダッシュの差などものともせず浜野を追い越して我先にと苗字の元へと辿り着いたのは速水。
遅れて浜野、倉間と苗字の元へと着き、甘酸っぱいレモンを摘む。



「あー…なんかこれの為に一日頑張ってる気がするぜ」

『典人大袈裟だよ』

「僕も同感」
「俺も」

『もーっ!皆しっかり!家まで帰るんだから!』



このままこの場で倒れかねない3人の背中を順に叩き葛を入れる。


『典人一緒に帰るんでしょ?これ食べて早く用意してきなよ』
「おー」

「ちょい待て倉間」
「……聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」
「なんだよ、文句あんのか?」

「「ある」」



バチバチと雰囲気的に火花が飛び散って見える。
抜け駆けなんぞさせるか、無言の圧力が倉間にのしかかるが苗字と帰る権利は渡さねぇと倉間も無言の圧力で対抗。

板挟みになって空気を感じ取ったのか、苗字はパタンとタッパーを閉じ『ストーップ!』と両手を広げた。



『皆で帰れば問題なし!ほら!3人とも早く着替えた着替えた!』
「マジで!?さすが苗字!」



苗字と帰れると言うことに舞い上がった浜野が倉間と速水の肩に腕を回す。


「早く着替えるぞ!」
「…今日は苗字に免じて許してやるよ」
「次も抜け駆けはさせないけどね」


そんな3人の様子を苗字は仲いいなぁと後ろから笑って見つめていた。






悪い様で素敵な四角関係
(隣は俺だからな)
(っちゅーかジャンケンでしょ!)
(浜野…ズルしないでよ…)


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