久しぶりに名前に触れた気がする。 部活も忙しく、なかなか2人で会う機会がなかった。 俺の自室のソファーに並んで腰掛ける。 ピッタリとくっついてくる名前との間に隙間はない。 『拓人と2人きりになるの久しぶり』 似た事を思っていったのかそう言って笑う名前。 2人きりじゃなくたって見ている笑顔に筈なのに、 自惚れかもしれないがいつもより嬉しそう(な気がする) スッと名前の肩に腕を伸ばし、引き寄せれば元から0だった距離がもっと近くなった。 同じ人の体なのにこうまでも細く、柔らかいものか。 毎度ながら少し驚く。 俺の胸に収まった名前の体。 いつもなら何も感じないフワリと香る名前の香りに、少し違和感を覚えた。 「…香水か何かでもしてるのか?」 もしかしたらシャンプーかもしれない。 鼻孔の奥に届いているその香りは今までの物とは異なっている。 その匂いが嫌いではないけど、この前までと違うと言う事がただ単に気になった。 『あ、蘭丸くんにいいシャンプー教えて貰ったの!』 良い匂いでしょーと名前は髪に指を絡めている。 流れる髪は綺麗で、香る匂いもいい香りだった。 でもこの香りが霧野の薦めたものだと思うと無性にもやもやしてきた。 『拓人?』 「……気に入らない」 『…もしかしてこの香り嫌だった?』 俺が嫌だと思ったのか体を離そうとする。 名前を抱き締める力を強める。 逃げられないようがっちりと。 さらに香るシャンプーの香り。 「…他の奴らから貰ったものを使うな」 どうせなら名前を俺でいっぱいにしてやりたい。 この髪も、俺色に染めてしまいたい。 長く俺の腕の中で踊る髪を人房手に取る。 さらりとこぼれていく髪。 前髪の間から俺を見つめている名前の目は酷く綺麗だった。 もう1度髪を手に取り、口づける。 『わかった』 頬を染めた名前は笑って俺の髪を梳く。 『私も拓人とか拓人の部屋から他の人の匂いしたら嫌だもん』 単純な俺の思考。 その言葉だけで名前の全てが愛おしく感じる。 長い髪から香る匂いと共に、俺は名前を抱き締めた。 君の香りに包まれて (些細な事なんてどうでも良くなる) (優しい君の香り) _ |