『聞いて蘭丸!この前神童くんに勉強教えて貰ったら85点とれたのっ!』

『この前南沢先輩がね!』

『その前には倉間くんが…』



コイツは故意に嫉妬をさせたいのだろうか。

時にそう思う事がある。
俺だって一の男だし、ましてや好きな女が他の男の話をしているのは正直イラッとくる訳で。
でも好きな手前あんまり強くも言えない。
こうして嫉妬している自分を心が狭いと思うぐらいだ、名前にも心の狭い男と思われたくないしな。
良かったなと相槌を打つことしかできない自分にやっぱり思う。
俺って心狭いなぁ………。

いつかやってくる我慢の限界で名前を傷付けたりはしないだろうか。
悩みは別の方向へと矢印を向ける。


『蘭丸?どうかした?』


無邪気に笑いかける名前が今は恨めしい。
俺は名前の両手を掴んで思いっきり名前を自分に引き寄せる。



『らっ…ん……』



突然のキスに抵抗しようとしたのか一瞬手に力が入ったが、気付いた時には名前既に抵抗の色はない。
それを確認して拘束していた両手を離して名前を抱きしめた。
微かに甘い匂いが広がって体が痺れる。
今、俺の腕の中に名前がいる。

それだけの事実が俺を満たし、仄かに優越感に漂わせる。


『らん、まる?』
「…あんまり妬かせるなよ」


華奢な体を傷付けてしまわないように。
でも力強く俺は名前を抱きしめる。



「勉強だって俺が教えてやるから、神童まで聞きに行くな。先輩達や倉間達だってお前を狙ってるかもしれないのに、」



俺がその続きを紡ぐことは出来なかった。


『お返し。じゃあ蘭丸…』


名前によって再び重ねられた口から小さな声で恥ずかしそうに漏れた言葉。
自分からしたらそうでもないのにやられたら妙な感じがしてムズ痒い。
でも決して嫌ではない。単純に考えればむしろ嬉しいに部類されるだろう。

言動・行動で俺を翻弄させる名前が、最終的に行き着く先は良い意味でも悪い意味でも俺を翻弄するという事だった。



『一生私に尽くしてくれる?』





見合った愛を君に捧ぐ

(テストもサッカーも?)
(勿論、)
(じゃあ帰りにアイス食べたいな)
(…奢ってやるよ)
(やった!)

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