冷たい素肌に暖かい人肌が触れる。
こんな時、相手の温度が感じられると安心感に包まれる。

蘭丸は私を後ろからスッポリと抱きしめて雑誌を読んでいた。
読んでいるのはサッカーの雑誌。
私にはわからないけど蘭丸には面白いんだろう。

私は特に何をするわけでもない。ただ蘭丸に抱きしめられたままボーッとそんな蘭丸を見つめていたり。


『ねー蘭丸』
「なんだ?」

『キスしていい?』


動きにくい腕の中で顔だけを振り返させれば目を丸くした蘭丸とばっちり目があった。
そんな蘭丸にえい、と不意打ちでキス。

蘭丸ってば私なんかより可愛い反応するんだから。

真っ赤になってしまった蘭丸から唇を離す。
バサ、と雑誌の落ちる音。
突然のことに動揺したみたいだけど…反応が古風だなぁ。


「な、なにするんだ突然!」
『蘭丸が可愛いから』
「…そういうことは男が女に言うもんだろ」


うん。顔真っ赤にしてそういうこと言うのが可愛いって気付くのはいつだろうね。


「ったく…」
『っん』


可愛い蘭丸に笑ってたら今度は私が口を塞がれてしまった。
目の前にある乱丸の顔。
じっと見ているとまつげが長いっていう新たな発見。


「…目閉じろって」

『もー、蘭丸女々しい』
「な…!」


離れていった整った顔に言葉を投げかければもっと蘭丸が真っ赤になる。


『もーらいっ』


私は体を反転させて蘭丸に向かい合い、真っ赤になった頬に口付けた。
でも今度は蘭丸も少し落ち着いた様子。

私をホールドしていた腕にギュッと力が篭る。
その力はやっぱり強くって蘭丸も男の子なんだなぁなんて呑気に思う。
さっきの言葉に基づいてか余裕ぶった笑みを見せた蘭丸に意地すら伺えた。
ちょっと不服そうな顔をしているのが若干バレたのか蘭丸が今度はいじらしい笑みを浮かべて私をの距離を限りなく0に近づける。


「残念だけど次は俺の番だからな」
『どーぞ』


押されたなら引いてみる。顔を突き出して蘭丸からの行動を待つ。
するとさっきまでの余裕はどこへやら。

両手が腰から肩に移し、ドキマギと心の準備をしている様子。
5秒、10秒と経過しても蘭丸が動く気配が一向にない。


『…それ』
「…!」


じれったくなってこっちから顔を近づけて私の頬に蘭丸のそれをくっつけてやった。

これまた真っ赤になる蘭丸にハッキリしないんだから、と思うけどそれを言ったら機嫌を損ねそうだから言わないけどね。
そんなところが可愛いからそれはそれでよしとする。




愛情はかわりばんこ

(…たまには俺にカッコつけさせろよ)
(そういうのは男らしい行動ができるようになってから言ってよね)

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