『篤志!ねぇってば!』

「………」


あぁもう何でこうなっちゃったんだろう!








今日は珍しく篤志が自宅デート以外のデートを許可してくれて(面倒だからってデートは基本自宅ばっかり)
だからちょっと気合いを入れて準備してデートに臨んだ。

ただ近所の道を歩くだけだったとしても嬉しい。
そう言うのがデートの楽しみだと思う。
手を繋いでいつもより近い距離を感じる。


「あんま引っ付くなよ」
『いいでしょ別にっ!』


些細な事ではあっても男よりも女の方がこんなことで愛を感じるもので。

大通りを抜けていつもは通らない道をゆっくり歩いていたら当たりの人々の声に交じって聞こえた見知った声。



「…名前?」

『あぁっ!麗一!』



跳ねた銀色の髪に長く垂れた人房の前髪は同じ小学校に通っていた雅野麗一の特徴だった。



「誰?」
『小学校の頃一緒だった麗一!今は帝国学園にいるんだっけ?』

「舐めるなよ、サッカー部の1軍ゴールキーパーだ」
『うそっ!?麗一凄っ!』
「で。そっちのは?」

「………そっちの?」
『私の彼氏!雷門サッカー部のエースストライカーなんだからね!』



……やばい。篤志の眉間に皺寄ってる。


流石にそれが分からないほど私も馬鹿じゃない。
麗一は確かに仲のいい友達なんだけどまさか帝国サッカー部のキーパーなんて思ってもなかった。
なに分今の篤志には相手が悪い。



「ふーん……」
「んだよ」

「いや、こんな奴がエースなら俺が点を取られることもないなと思っただけだ」

「……あ?」


『ごめん麗一また連絡する!!またね!』



篤志の腕を引いて全力疾走で麗一の前から立ち去った。
私の非力な筈の力でよく篤志を引っ張れたものだと思うけどこれが正に火事場の馬鹿力ってものだと実感する。

ごめん麗一このままだと篤志の起源が最高潮に悪くなるの…!

そしてそのまま結構な距離を走ってきて話は冒頭に至る。
うわぁぁ篤志ってばやっぱり既に機嫌悪いよ…!
予想道りって言えば予想通りになっちゃったんだけど…麗一に合わせるんじゃなかった。


『機嫌直してよ〜』


折角のデートだったのにこのまま気まずい雰囲気にはなりたくない。



「…俺があんな奴に負けるとでも思ってんのか?」
『っへ?』

「さっきアイツの言ったこと否定しなかったろ」



さっき麗一が言ったこと…ってまさか………。



『麗一に妬いてるの?』
「…んだよ。わりぃか」

『もー…麗一の性格と篤志の正確考えたらどっちも機嫌悪くなりそうだったから早めにあの場を切り上げたかっただけだよ』


顔に似合わず可愛い思考な篤志に思わず笑ってしまった。
慌てて逃げてきたから否定の暇がなかった事で麗一の方の肩を持ったと思ったらしい。


『それに、篤志が負けるだなんて思うわけないじゃない!私の彼氏なんだから!』


そう言って篤志の腕に抱き着く。
今度は引っ付くなよなんて言わなかった。
そんな小さなことではあるけどやっぱり篤志が好きだなぁって、なんとなく再確認してしまった。





彼は私の彼氏です。

(名前、ちょっとアイツの連絡先教えろよ)
(?どうして?)
(ホントに止められるかどうかケンカ売る)
(却下)


●●


- ナノ -