狩屋の行動はいっつも全くもって理解不能だと思う。

というかなんで私にちょっかいを出してくるのか。
正直誰でもいいんじゃないかと思うのになぜか突っかかってくるのは私限定。
もう面倒だからなんで私なのなんて聞くのはやめた。


『離れろ狩屋』
「嫌ですー」

『…重い』


私の背中に凭れ掛かって悠長にドリンクを飲む狩屋。
重いって言ってるのに退く気はなし。
バインダーに今日の練習のメニューをまとめている私は自分の膝を机にしているので動くことができない。
それをいいことに狩屋は休憩中にずっと付き纏ってきている。



『…なんで私なの?』



ペンを滑らせる手を止め、久々にターゲットを私にした理由を聞いてみる。
間をおいて狩屋が喉を鳴らす音。


「そんなの簡単ですよ」


少しだけ胸が高鳴った気がした。
まさか、いやそんなわけないと私の中で謎の葛藤が起こる。
狩屋の体温を背中から感じて、上がっていっているような私の熱が伝わりそうで嫌になった。

この沈黙に狩屋は何を思っているのか。
聞きたいようで聞きたくな……



「先輩の肉付きがいいからです」

『死ね狩屋ぁあぁぁぁぁ!!!』
「イッテ!!」



返せ!私のドキドキを返せ!!!!

バインダーで背後にいる狩屋の頭を思いっきり殴ってやった。
結構景気のいい音が響いてちょっとスッキリ。
だがしかし乙女の気持ちを弄んだ罪は重い。
それ言ったらまたからかわれそうだから自分のこと乙女だなんて言わないけど。


『いい加減にしなさいよ…?』
「スンマセン」
『棒読み』
「気のせいです」

『(ンの野郎…!)』


声色に反省の色がなく、もう一回殴ってやろうかと思ったがバインダーに挟んである用紙がぐちゃぐちゃになりそうなので却下。
こいつの為に大事な資源を無駄にできるか。

もう無視だ無視。

背中の狩屋は置いといてバインダーに集中することにした。
すると私がもう構わないと察したのか静かになる。

―最初からそうしてくれればいいのに。
あ、私が構うから悪いんだっけ。
と思いつつも流石にスル―することができない私。



『…狩屋?』



シャーペンをバインダーに挟んで背中に声をかけてみる。

もう大体の内容は書き込んだからもう大丈夫だろう。
思って声をかけたのだが予想に反して憎まれ口も、それどころか返事すら返ってこない。
あれ、と思い首を捻って後ろを向いてみた。


『…寝てる』


寝息を立てて完全に寝ている狩屋。
私の肉付きのいい背中は枕じゃないと思いつつも、なんでだろう…あまりにも気持ちよさそうに寝ているので起こさないでやることにした。






それでも、憎めないんだ

(寝てるときは可愛い顔しちゃってさ)
(…なんかムカつく)

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