私は雷門中学2年生苗字名前。
ごく普通の学生でごく普通のサッカー部マネージャー…。
……の筈だった。


「名前セ〜ンパイ」
『ゲッ…狩屋!』

「なんスか"ゲッ"て」


最近転校してきたこの狩屋マサキという後輩に付き纏われている。
しかもただ付き纏われているだけではない。


「…ドリンクま〜だ準備できてないんですかぁ?」

『うっ、煩い狩屋!もうできるから練習行った行った!』
「喉乾いたから無理です〜」
『この……!』


ウザイ。とてもウザイ。

そしてネチネチと嫌味を含めてくるから腹立たしい。
水道で作業を続ける私の横にやってきて愚図り始める狩屋に舌打ちの一つでもかましたくなる。
わざわざまだできてもいないドリンクを貰いに来たのかコイツは。


『も〜!今頃拓人とか蘭丸とか探してるから!』

「別に呼びに来てないし大丈夫でしょ」
『敬語はどうした敬語は』
「すいません名前センパイ」

『棒読みか』


なんでこんなに口と態度が悪いのか。
つり上がった目に厭らしい笑いが張り付けられて憎さ倍増。
可愛さは余らず憎さだけが増していく。
松風くんや西園くんはあんな可愛らしいというのに。


『はいこれ狩屋のドリンク。さっさと練習行け』


はい。とボトルを押し付けて一刻も早くこの場から立ち去らせようとした。
だがそう一筋縄ではいかないしいそれを持ったまままだグダグダと付き纏ってくる。


『っだー!!なんなの狩屋!!』
「なにって…なんでもないですけど?」
『うっわ腹立つ』

「おーい狩屋ー!!」
「『!』」


道の向こうに見えるこちらに走ってくる2つの影。
大きな影、小さな影…そして特徴的なあのシルエットは……。
と見までもなかった隣に立つこいつとは違うデキのいい後輩だ。


『松風くん西園くん、どうしたの?』

「すいません苗字先輩!」
「僕たち狩屋を呼びに来たんです。狩屋、先輩たちが呼んでたよ!」
「あーごめんごめん。名前センパイの手伝いしててさ」
『は?』
「あぁそうだったんだ?」
「じゃあ僕たち先戻ってるからね!」
「うん」


手伝いとか断じて違う!!!
見て!狩屋の手に持っているボトルを見て!!!
コイツ邪魔しに来てただけだから!!

と言う間もなく2人は走ってグランドに戻っていってしまった。
こんな時スポーツマンって怖い。なんであんな元気なの。


『…なんなの狩屋』
「なにがですセンパイ?じゃ、早く戻りましょ」

『ちょっ、それ私が…』
「言ったでしょ、手伝いに来たって」


狩屋が私が持っていく筈だったボトルの入ったカゴを抱えて行く。

私は騙されない。
…このギャップに騙されたりしないんだからね。






猫かぶりにご注意!

(その疑惑の目はなんですか)
(……別に)

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