抱え上げた南條の体はとても軽かった。
最近コイツがあんま物食べてないことは知ってた。
それにしても女ってこんなに軽いのか、思っている暇もなく南條を取り囲む女共に一睨みきかせて俺は無言で走り出す。
俺に見られたからにはもう南條に手出しはできないだろう。
(これでまだ南條に手を出すようならある意味その女共には感服する。勿論悪い意味で)

今考えるのは南條の事のみ。

頭からは血が滲んでいてぬるりとそれが手に付いたが気にはしなかった。
できるだけ体をに衝撃を与えないよう、負荷をかけないよう保健室を目指す。
辺りの見る目なんか気にしてられない。
こんなに心に余裕がなくなったのはいつ以来か。

いつもの自分なら今の自分に嘲笑すら浮かべるであろうと思いながらドアを開けるとそこにいつもいる筈の保険医はいなかった。
見回すと机の上に出張中と書かれた紙。チクショウ間が悪ィ…!

とりあえず誰もいないベットに南條を降ろし、最低限の応急処置をするため道具を探す。
南條の傷はバットで殴られたあの傷だけじゃない。
改めて南條のいつも着ている長袖を捲ってみたら隠された小さな傷に見て取れるほどの大きな傷。
なんとなく予想はしていたがまさかここまで酷いとは。

本当にコイツはあぁしている時も反撃の一つもしてないんだな。



バカじゃねぇのか。



思うと同時にこみ上げてくるのは怒り。
なんでコイツは自分を大事にしないんだよ。
意識なく舌打ちがしたくなる。


「…バーカ」


もう血は止まったのか頭を撫でてみても血は付かなかった。
一応その頭に包帯を巻き、傍にあった椅子に腰かける。



『…みなみ、さわ?』
「!」


呟いたのが聞こえたのか間をおいて南條が目を開けた。
周りをゆっくり見回して、状況を把握しきったのかそうでないのかはわからなかったが俺の方を向く。


「大丈夫か?」
『…うん、ヘーキ。…慣れてるし』
「慣れてるって…」

『私がこんな性格だし反撃しないのが気に食わないって奴らはいっぱいいるから』


ヘラリと笑う南條が妙にムカツク。



「―なんで笑ってんだよ」
『え…?……っきゃ!!』

ドサッ


起こしたばかりの傷だらけで細い体をベットへ押し倒す。
両手を掴んで、白いシーツにそれを縫い付ければ少し南條の顔が歪んだ。
安っぽいスプリング音が嫌でも耳に付く。


『南沢「なんでお前はもっと自分を大事にしねぇんだよ」

『え?』


このベットに押し倒し押し倒された男女と言うシチュエーションで顔を赤らめる南條に、正直俺もどっかで欲情してるのかもしんねェ。
男女の差が歴然とされる押さえつけた腕。
下手したら折っちまいそうな手を取って、それに口づける。

最後に、どんどん真っ赤になって行く南條の額に、キスをして俺はベットから降りた。





「次、こんなことがあったらお仕置きだぜ?―悠里」




この初心な悠里の名前を初めて呼んだ反応を見ていたかったけれどこれ以上ここにいたら俺の理性が持たない。
俺はその言葉だけ吐き捨てて、もう一度あの猫が待っているであろう中庭へと歩を進めた。







可愛い猫の躾け方

(にゃー)
(お前、ご主人様に随分忠実な猫なんだな)
(にゃ?)

(…あいつもこんくらい素直になれっての)

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