親が寝坊して弁当を作れなかったから、と今日は昼休みが始まってすぐに購買へ寄って行った。

とりあえず目についたパンと飲み物を安っぽいビニール袋に引っさげて廊下を歩く。
廊下から覗いていた窓から南條が歩いているのが見えた。
そういやアイツちゃんと飯食ってんのか。
なんとなく気になってもう少しで教室に着く足を翻して中庭へ向かった。
視界の端に屈んでいる南條の姿を捉えると、その足元には猫。




「…好きだねぇ」

『ふ、わっ!?南沢後ろから近付かないでよ!』




皿に注いでいる牛乳を零しかけたのかかなり慌てている。
別に脅かすつもりでやったんじゃねぇし。


「つかお前、メシどーしてんの?」
『今週金欠なの』

「猫のエサ代か」
『ち、違うっ!』


この反応は猫のエサ代だな。
最近は大体コイツの真逆の台詞が分かってきた気がする。
自分が金欠になってでも猫の世話するとはご苦労なこった。

腰を下ろしてさっき買ったばかりの昼食を取り出す。
俺はテキトーに買ったパンの1つを南條へ投げつけた。


『…なにこれ』
「やる」

『……』


ぱふ、と良い音を立てて南條の頭に落下したパン。
付き返されるかとも思ったがそれを手に取って南條は無言で袋を破る。
ちなみに投げたパンはチョココルネだった。
(何でんな甘いモン選んだんだ俺)


『…ありがと』


南條が小さな声で呟く。
俺はメロンパンの袋を破ってそれに思いっきりかぶりついた。
両手でパンを持ってチョココルネを頬張る南條は小動物のように見える。
俺は太い方から食う派だが南條は細い方かららしい。

でも俺は知ってる。その食べ方をすると


うにょ
『!』


反対側からチョコがはみ出てくるってのを。

見事思い通りになってくれた南條に俺は内心鼻で笑う。
反対側から食べるとか細い方を千切って食べるとかすりゃあいいのにひたすら細い方から頬張る。

耐え切れなくなって思わず噴き出した。


『な、なんで笑うの!』
「いや、南條があんまりにもバカだから」


危うくメロンパン吹き出しかけた所だ。
笑いを落ち着かせて顔を上げると相変わらずすぐに赤くなる南條の顔。
目を合わせたらすぐに目を反らせて南條が呟いた。



『南沢だって笑ってた方が普段の仏頂面よりよっぽどいいと思うけど』



照れ隠しだろうか、南條はパンにかぶりついた。
(やっと太い方からかぶりつきやがった)

真っ赤な顔は隠せてねぇのにな。



「そりゃどーも」



俺は紙パックのコーヒー牛乳を開けてフッと笑った。







餌付けができました
(ジュース買ってくる)
(これ飲むか?)
(飲むわけないでしょ!か、か、間接キスなんて!)

((あー…そんなことまで気にすんのかコイツ))


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