ウチのクラスには大抵1つ空席がある。
俺の左斜め前の席。
ここから見える机の中も空な所を見るとハナから勉強をする気はないらしい。
授業態度を除き勉強の事でとやかく言われている所は見たこともない事から考えて成績に問題はないのだろう。
先公からしたら授業に出ない癖に点は取るヤな生徒。
そいつの名前は
「南條悠里はまたいないのかー?」
南條悠里。
なんとなく外に出たい気分だった。
あえて言うなら1人になりたかった。と言う方が正しい。
あまり人のいない中庭は俺にとって居心地がいいものであまりこの中庭という穴場を知っているという奴はいない。
俺ですらこの穴場を見つけたのは最近。
あの時は1匹の猫を追いかけてたらここに辿り着いた。
猫は寒い所と暑い所を見つけるのが得意とはよく言ったもので、中庭の中でも人気のないこの場所は1人になりたい俺の特等席だ。
木に囲まれ風が吹き抜ける。
そんな些細なことが妙に気持ちよく感じるのはこの環境のせいだろうか。
ともあれここに休息を求めに来た俺は芝生の地面に腰を下ろす。
ゆったりと眠気に誘われ目を重力に任せて閉じようとした。
ガサッ
不意に頭上辺りから聞こえてきて目を開ける。
『きゃぁあぁぁぁああ!!!』
バキ
バキ
ドサッ
途端に目に入ったのは既に落ちてきた残像だった。
何が落ちてきたって、人が。
『いったたたた』
「……水色ストライプ」
『へっ!!!!????』
俺の存在に気付いていたのか気付いていなかったのか。
(不可抗力で)見えてしまったそれのガラをボソリと呟けばやっと俺の存在に気付いたのか物凄い勢いで振り返る。
後姿でまさかとは思っていたが。
『み、見た!?見たの!?南沢っ!!!』
「見たくて見たんじゃねーよ」
慌ててスカートを押さえてへたり込む。
見たこともない表情がの南條悠里がそこにはいた。
その顔は赤い。まるでペンキでもぶちまけた様な。
「なんでこんなトコにいんだ」
『それはこっちの台詞でしょ!私は……!』
にゃあ
この場には似合わない酷く間の抜けた鳴き声。
音源でもある南條の足元を見るとこの前俺をこの中庭まで導いた猫がいた。
懐いているのか南條の足にすり寄っている。
『勘違いしないでよ!?別に猫が好きだからとかこの子懐いたとかそんなんじゃないから!たまたまここに来てたまたまこの子がいただけなんだからね!』
つまりは猫目当てでここに来て猫を追っかけて落ちてきたんだな。
真っ赤になって捲くし立てる南條。
それを聞く俺。
その間で猫がもう1度にゃあと鳴いた。
降ってきた不良なクラスメート
(……随分懐いてんな)
(ま、毎日来てるとかじゃないから!)
((…毎日来てるのか))
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