『篤志、アンタ勉強はいいの?』
「俺は優秀だからいいんだよ。そう言うお前こそ、勉強しなくていいのか?」
『残念、私は篤志よりずっと優秀だから』
「成績だけな」
『誰も生活態度の話はしてない猫かぶり』
「…猫好きだろ?」
『す、好きじゃない!』
「じゃあその膝に乗せてるのはなんだよ」
『…猫』


テストの近付く頃。
部活はなし、空いた放課後にやることは本来勉学に勤しむ事なのだろうがこの2人にはその考えは全くといっていい程なかった。
勉強するまでもなく成績だけで生活態度に対する注意を捩じ伏せている悠里は勉強いらず。
それに最近は南沢のおかげもあってか授業にちょくちょく出ている。
南沢は得意の猫被りで先生受けはバッチリ。
成績も悠里には劣るものの決して悪くはない。


『というか篤志、眼鏡外さないの?伊達でしょそれ』
「あー…忘れてたな」


悠里が指差したのは南沢が勉強用にかけている伊達眼鏡だった。
度が入っていないそれはつい外すのを忘れるらしく今だに南沢の目元に存在している。
ゆったりとした動作で眼鏡に手をかけた時、悠里はバッと南沢から目を逸らした。


「………」
『………』


なんだと思って眼鏡に手をかけるのをやめる。
するとまた顔を合わせる悠里。

手をかける。
目を逸らす。
手を離す。
顔を合わせる。

そして南沢は1つの結論に至った。


「なにお前、俺の眼鏡姿がそんなカッコいいか?」
『!』
「ほら顔合わせてみろよ」
『嫌!』
「…ふーん」


面白い発見と言わんばかりに南沢はそっぽを向く悠里の顎を掬い取る。
すると真っ赤に染まった悠里の顔が南沢の瞳を捉えた。

フレーム越しに互いの視線が合うが悠里の顔は赤くなっていく一方だ。
しっかりと見える眼鏡沢。違う南沢。
ただ眼鏡をかけているというだけなのに、いつにも増して妖艶な空気を放つ南沢に悠里は戸惑っていた。


『あ……あ……』
「あ?」

『篤志のえろ…!』

「…へぇ…?エロとはいい度胸じゃねーの?」
『へ?…きゃぁ!』


顎にかけられた手に力が加えられ、そのまま後ろに倒れ込む。
地面は芝生。もちろん痛みを感じぬほどの力ではあったが悠里に反抗できるほどの力はなかった。



「俺が…特別補習でもしてやろうか?」



眼鏡のブリッジを押し上げ、耳元で囁く。
ビクリと体を震わせ身を捩るが南沢がそれを抑え込み逃げ出すことは叶わない。
南沢がニヤリと笑い、悠里へとの顔を近づけた。





「にゃーっ!!!」
「って!!」

『!』


悠里の膝の上で寝ていた猫の睡眠を妨げた天罰。
鋭い爪で南沢を攻撃し、その隙に悠里は体を起こしてもの凄い勢いで距離を取った。

ナイス猫。
思わず親指を突き立てガッツポーズ。

引っかかれた際に眼鏡のフレームも引っかけていたのか芝に落下する眼鏡。
とりあえずそれを回収して一息つく。
なんて凶器。悠里は眼鏡を握りしめ眼鏡にあるまじき視線を向けていた。





色気漏洩問題

(もしかして悠里…この前俺と勉強するっての断ったの…)
(……!!)
(そんなこと気にするなんて…可愛い奴)
(うるさいっ)

_

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -