授業の半ば。
時は巡って昼休み。

久々の授業に疲れたのか、悠里の表情からも披露が見て取れる。
打って変わって授業中いい子ちゃんぶるのに慣れている南沢はケロリとした顔でその隣を歩いていた。


『よくあの退屈な授業ずっと聞いてられるわ…』
「慣れだよ慣れ。必要最低限しか聞いてねぇし」

『あっそ』


悠里は市販の菓子パン、南沢は弁当と下げて、向かう先は中庭。
授業中でもずっと一緒にいた猫との感動の再会、という訳だ。

男子の中では背の低い方の南沢だが、それよりも一回り背の低い悠里が隣に並べば釣り合いが取れる。
誰もそれに対するツッコミはしないが三国やらはなんだかんだでよかったなと思っていたり。
(口には出さずともコンプレックスなのは誰もが知っている)
少し小さめの男女カップルが並んで中庭に入っていくのは既に中学内では有名になっていることを2人は知らない。


『…いない……』

「いつもならそろそろ出てくんのにな」
『…別に猫探してたわけじゃないから』
「嘘付け」


猫が見当たらないこの寂しげな顔で何を言うかコイツ。南沢は弁当箱で頭を小突く。


『なにすんの』
「嘘つきの制裁」
『嘘じゃない』
「はい嘘」
『いたっ』


もう一回、言わんばかりに今度は結構な音を立てて頭に弁当箱がヒットした。
流石に少しイラ付いたのか悠里が菓子パンで反撃。
とはいっても箱ではないパンの威力などたかが知れている。

袋で叩かれていることに対し南沢は素知らぬ顔で木の上に猫がいないかを探す。
反応を見せない南沢にムスっと頬を膨らませつつも悠里は続いて猫を探す。


「いつもなら出てくんのにな」
『……』
「悠里が素直にならないから出てこないんじゃね?」

『な…!なにそれ!』

「あーあ、猫出てこねぇなー」


わざとらしい南沢の笑みに思わず顔を赤らめたものの、悠里は考えを改めたほうがいいのかの葛藤に至ってしまう。
かといって自分の言動を曲げてまで素直にはなり辛い。
ましてや南沢の前で。悠里的には恥かしいにも程がある。


「はい。顔真っ赤」
『っひゃ!』


不意打ちにくらった南沢のキス。
思わず挙げた声は予想以上に甲高いものになってしまった。
我ながら恥ずかしい、悠里は頬を抑えながら全力で南沢との距離をとる。

南沢は不敵に笑う。
この後に素直になれない彼女からの痛い制裁が自分の頬に降りかかることを知らずに。






素直になりましょう

(…だから、会いたいんだろ?)
(べっ、別に!)
(ふーん……あ、猫)
(えっ!?)
(うっそー)
(……!)

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