『明日は授業行くから』

この前から若干気にしていたのか珍しく宣言をしたのが昨日の話。
一足先に教室で自分の席で肘をついて中庭のある方向をほーっと見やる。

最近は朝から中庭で悠里と一悶着してから教室に来るので真っすぐ教室に来たのは久々だった。
車田、三国、天城についに見放されたかと突っ込まれたがそんなことない為に朝から同じ内容で三度説教するハメになった。


「(誰が見放されただ。誰が)」


南沢の機嫌のメーターが下がるが周りでそれに気付くものはいない。
今日宿題あったっけ、当たるのは出席番号何番と日にちから考えて誰だろう。

あぁ悠里今日当たる日じゃねーの。
ちゃんと宿題してんのか。
他愛のない中学3年生の思考の中に淡い思いが交錯する。


『篤志おはよ』

「!悠里」


鞄を持っている姿が新鮮な悠里が南沢の横で立ち止まった。
悠里が一旦鞄を自分の机の上に置いて南沢のもとに戻って来る。


「悠里が教室にいるのに違和感しか感じねぇ」
『私も来たの久しぶりだからしょうがないでしょ』

「で、あの猫放っといていいのかよ?」
『エサはあげてきたから大丈夫…だとは思うけど休み時間に見に行く。篤志は?』
「……俺も行く」


南沢の前の席に我が物顔で座る悠里。

中庭に在中しているであろう猫に思いを馳せる悠里に思った事を言えばやはり抜かりはないらしい。
なかなか考え深い悠里の事。
嫌いとは公言するも大好きな猫に対する思いは人一倍強いことを南沢は知っていた。


「とんだ天邪鬼だよな」

『なにいきなり』
「いーや。なんでも」


好きなら好きって言えばいいのになんで素直になれないんだか。


『で、篤志はなんで機嫌悪いの?』

「は?」
『来た時から悪かったじゃない。何かあったなら言ってよね気持ち悪いから』


どうやら南沢が機嫌が悪いことに気が付いていた様だ。
意外に鈍感なクセしてこんな事には鋭い。


「大したことじゃねーし」
『嘘』
「…ただお前に愛想尽かされたとか言われただけ」

『……、"だけ"ってなに"だけ"って。ちょ、ちょっとは気にしてよ』


少し不貞腐れた様に目線をそらす。

愛想つかされたという事に対する慌てた様子もない南沢に自分を気にして欲しいという旨の事を言うことに多少恥ずかしさを感じたらしい。
顔は少し赤く染まっていた。
それを本人的には表に出していないつもりなのだろう。
表側で丸見えだということにも気付かず。


「……お前やっぱ可愛いな」

『は、はぁっ!?』


人としては若干口は悪いが悠里なりの心配の仕方は恋人としてはアリなのかもしれない。







恋人の偏差値

(わかりにくいようでわっかりやすいんだよ)
(…どういうこと)
(そういうトコ)

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