俺はスーツ姿の"フィフスセクター幹部"である咲夜さんしか知らない。
同じ学生なのは確かなのに、制服姿なんて見たことないし私服なんてもっての他だ。
どこの学校に行っているのかも知らない上に性格…と言うよりかは立ち回りが大人びている分推測もし辛いものがある。

きっと聞いても得意の話術でフラリとかわされ、丸め込まれるのがオチだろうとなんとなく予想をしていた。


『私?私は雷門生だが』
「…は?」

『いや、"は?"ではなくてだね。私は君と同じ雷門の生徒だと行っているんだよ剣城少年』


あっさりと返ってきた返答に思わず間が抜けた。
新聞か雑誌か、膝の上で広げていたそれから俺に視線を上げた咲夜さん。
中学3年生なのは知っていたがまさか自分と同じ…だったとは…。


『だから君の授業態度もよーく知っている。義務教育だからといって勉学を甘く見ていると後悔するぞ』
「…ストーカーかアンタは」
『失敬だな。私は仕事の一環として君のことを知っているだけだよ』

「そういうの、プライバシーの侵害って言うんですけど知ってます?」

『はっはっは。私がそれを知らない程馬鹿だと思うのか』


思わねぇけど時にこの人本当に何考えてるのかわからなくなる。
常識人かと思えばこうして普通に非常識的な発言もさらりと流すように言う。
結局この人は本性を他人に掴ませようとはしない。

いつの間にか手に持っているのは何故か学校の教科書と思われるものにすり替わっていた。


『君の学力チェックでもしてやろうか?』

「謹んで遠慮します」
『おや。君に謹みというものがあったのか』


失敬なのはどっちだ。
思ったが言えばこの人の思う壷になる。
(それを理解するまで何度自爆したことか)


「そういう咲夜さんはどうなんですか」
『私?』
「学校で見かけたこともないですし、義務教育なんでしょう?」

『私には中学校は幼稚過ぎてな。行く必要すら感じないのだよ』
「…?」
『私は既に高校までの勉強はマスターしているから中学なんか暇で仕方ない。だから日中ここにいるのさ』


……一体この人何者なんだろうか。


『ちなみに、強要されたんじゃなくで勉強は趣味でやっただけだ』


更に意味がわからなくなる。
趣味で中学生が高校生の勉強なんかするだろうか。

篠原さんは机の中から使い古されたと思われる参考書を取り出し、大きな音を立てて机の上に置いた。



『いるか?』
「いりません」

『そうか』



次の瞬間。
ボッと音を立てて参考書が、燃えた。

目を見開いて顔を上げればその手には一本のマッチ棒。
(どこから出したんだこの人)
というかそんな簡単に燃やしていいものなのか。



『努力の後なんて残しているのは未練がましい。それに……』
「それに?」



『努力が実るかなんて、神にしか分からないのだからな』



目の前で轟々と火が燃え盛る中、炎を見つめてポツリと呟やく。
そんな咲夜さんの赤く長い髪が炎と同化して見えた。




燃え盛る烈火

(私の瞳には)
(それを映すことすらもおこがましい)

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