『剣城少年。君はーサッカーが好きか?』



フィフスセクターからの指示であるサッカー部を潰した後。
いつもの飄々とした雰囲気ではなく射抜かれそうな、そんな視線で突然咲夜さんに問われた。
"サッカーが好きか"とフィフスセクターである俺に聞くのか、疑問に思う。
サッカーが好きでここにいる奴なんていないだろう。
むしろ嫌悪に対象になるぐらいだ。


『無言、ということは嫌いと取るが』
「…あぁ。嫌いだな」

『ほう』


カツン


椅子に座っていた咲夜さんが立ち上がり、机の上においてあったサッカーボールを手に取る。
手にもっていたそれから手を離し、咲夜さんは軽くリフティングを始めた。



『好きと嫌いは紙一重さ

小さい子が好きな子を思わず虐めたくなるのと同じ
好意というものは幼稚で子供じみたものでしかない』



この人、サッカーできたのか。
それが俺の率直な感想だった。

黒木さんのように裏方専門と思っていたがそうではないらしい。


『剣城少年、"好き"の反対派何か知っているか?』
「…"嫌い"でしょう」

『はっはっは。君はまだまだ子供だな』


高く蹴り上げたボールはゆるい弧を描いて俺のもとへ飛んでくる。




『正解は"無関心"』




ボールをトラップして足で止める。
満足げに笑った咲夜さんはくるりと背中を向けた。


『人の思いと言うものは単純明快なようで複雑怪奇

他人を推し量ると言う行為には大きな溝が生まれてしまう
"表"と"裏"。その2つを同時に理解しなければ他人と言うものあh見えてこない
だからこそ私は"裏"が嫌いなんだよ』


あくまでも口調は落ち着いたままだった。
でも言葉の"裏"に見えたのは嘲笑。
やっぱりこの人の言っていることはわかりにくい。


『あぁ。意味は分かってくれなくて結構だ私を推し量ろうとしなくていい』

「……"関わるな"と言う事ですか」
『流石。剣城少年は理解が速くて助かる』
「この語におよんで"関わるな"とは難しい事だと思いますが」

最低限、フィフスセクターとしての関わりを持つことになるだろう。
一応そんな組織に所属している内は、な。


『それなら大丈夫だ』


長い髪を揺らし咲夜さんが振り返った。
その髪と髪の間から見えた目には目の前にいる俺ですらも映っていない。



『私は他人に"無関心"だからな』



こんな人当たりのいい貼り付けられた笑顔。
言っていることは大分ぶっ飛んでいるがそれは今に始まったことじゃないから驚かなかった。


『あぁ剣城少年。私のボールを返してくれないか』


返し忘れていたボールを改めて見てみると、かなり擦り切れて薄汚れているとこに気付いた。
使い古されたボール。
いや、使い古されていた、と言った方がいいのだろうか。俺には分からない。

ボールを返して、それを見て笑う咲夜さんはきっと、他人に"無関心"ぶった"サッカー嫌い"なんだろう。





汚れたボールの好き嫌い

(嫌いと好きは紙一重)

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