フィフスセクターからの召集がかかった。
無機質な携帯から発せられる黒木さんの声に無機質な返事を返し、飾り気のない携帯をポケットにしまう。
病院に向かおうとしていた足を翻して本部を目指す。


いつからこのやり取りを日常とし、この道程を歩いただろう。
優一兄さんの足を治すため、フィフスセクターに従って。

もう本当のサッカーなんてとうに消えてしまっていると言うのに。
力もない癖に反抗する馬鹿共を制裁するのは少々腹がたつ。

着いたのは大きく聳え立つビル。
だがそのセキュリティはかなり厳重であり、いくつかの検証をくぐり抜けて聖帝の元へ歩を進めた。
毎度ながら面倒だ。
何重ものセキュリティを通ってこんな無駄に長い廊下を歩くぐらいなら軽いセキュリティで短い廊下になるような本部にしろよとも何度思ったか。



『おや、剣城少年じゃないか』


不意に後ろから聞こえた薄暗いこの空間にそぐわない女の声。
俺の知っている中でこんな場所に普通に出入りする女など一人しかいない。



「咲夜……」

『こら剣城少年。私の事は"咲夜さん"と呼び給えと何度言ったらわかるんだい?』

「…召集ですか咲夜サン?」


そう言えばよろしい、と咲夜さんが隣に並ぶ。
咲夜さんの方が若干背が高く、実年齢も俺より上だ。(確か中3だった筈)
そして何より、この人は俺の上司にあたる。


『その通り私にも召集だよ剣城少年。君は病院に寄る最中召集がかかったんだろう?』

「なんで知ってるんですか」
『剣城少年は見かけによらず単純だからだよ。簡単な事さ』



ホントにこの人の考えてる事はわからない。
俺がフィフスセクターになるよりも前にここにいていつだって俺よりも前に立つ女。
一度気に食わなくて突っ掛かったこともあったが逆にこの俺が話術に丸め込まれてしまった。


『そう、実に世の中は単純だ。』

「?」



『この世には実に単純なサイクルが存在する。

強者が上に立ち弱者を支配するというサイクル。いわば弱肉強食とでも言おうか。
だがこの世には下剋上と言う言葉がある。これは一瞬の矛盾だ。弱肉強食というサイクルは徐々に歪みだし最終的には下剋上になる。
こうした一辺のサイクルを纏めてみて初めて世界は一つになる。

ごくごく簡単なパズルなのだよ』



哲学めいた話術に頭は混乱する。
最終的に何が言いたいのかがこの人の会話からは読み取りにくい。

真っすぐ言えばいいものの、こう言った遠回しな話の運びが俺はどうも苦手だ。
同時に俺はこの人自身が苦手だ。




『剣城少年。このパズルを組み立てるためにも私は上で君を待っているよ』




だが結局は一つ。
謎を引っ掛けてから咲夜さんはこの場にそぐわない笑顔で俺の横を歩くのだった。
ただしその笑顔は貼り付けられた笑顔。
その違和感に少し寒気がする。

そして毎度思う最大の疑問は






こんな人がなんでフィフスセクターにいるのか、という事だけなのだが。







巡る謎多数

(あぁ剣城少年。いつか君が私よりも背が高くなったら呼び捨てにしても構わないぞ)
(…そーですか……)


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