土曜日の練習は午前中から昼食をはさんで夕方まで行われる。
受験生といえどやはり部活をしたい身。汗だくになってエネルギーを消費し弁当で回復。

必須アイテム。弁当。

これがなければやる気も何もなくなる。
そして現在、南沢篤志はそんな窮地に陥っていた。



「どうしたんですか?南沢さん」
「…弁当忘れた」

「「「「うわぁ」」」」



思わず哀れみの声が辺りから飛ぶ。
だが育ちざかりなサッカー部員には弁当を分け与えるという余裕もない。

ただただ哀れみの視線や言葉を背に受けため息を付いた時部室のドアが急に急に開いた。



『篤志!』
「ゲッ……!なんでこんなトコいんだよ」

『ゲッとは失礼な。折角弁当持ってきてやったのに』
「…サンキュ」


「皆のお姉さんさん。お久しぶりです」

『あぁ神童くんに霧野くん、相変わらず可愛いね』

「皆のお姉さんさんと言えど毎度毎度いい加減はっ倒しますよ」
『やれるもんならやってみな。ところで音無先生は?』
「職員室で昼食休憩です」


『なんだ、残念』



言葉を入れる暇もないマシンガントークが繰り出され状況のいまいち掴めていない天馬と信助が顔を見合わせる。
なんとなく言葉から察するに、この目の前にいる女の人は先輩2・3年とは知り合いらしい。
何の躊躇もなく神童と霧野を可愛いと言い張り挙句の果て顧問の春奈を探し出したこの女性。

片手に構えられた南沢の弁当が更に女の人の人物像を考える思考を麻痺させる。



「あの、キャプテン。この人は…」

『あー……君たち新入生か』
「あ、はい!」

『うん。急に悪かったね。私は南沢皆のお姉さん。いっつもバカ弟が世話になってます』






「「……弟ぉ!?」」




バッと南沢の方を向けば既に皆のお姉さんの持ってきた弁当を黙々と食べ始めている。
もうこの件に関しては関わらないと言う沈黙の意見が見て取れた。



『なに?私が妹に見える?』

「いやいやそうじゃなくって…」
「南沢先輩が弟って言うのが…なんか新鮮で」


じっと皆のお姉さんが南沢を見やる。
するとあからさまに南沢が視線を逸らした。

ターゲットに狙いを定め、慣れた手つきならぬ慣れた足つきで足元に転がっていたボールを蹴りあげる。



『篤志…アンタ後輩ちゃんと可愛がってる?』

「……」

『返事はイエスかノー』

「……………イエス」




『今の間は何だ』「ぐふっ!」




「えええぇぇぇえぇ!?」



ソニックショットさながらの勢いで弟に向けてボールを蹴りはなった皆のお姉さん。
丁度ご飯をかき込んでいたいた弁当箱にボールは当たり見事弁当箱はボールと共に顔面に叩き付けられることになった。
あまりの突然さに声をあげれば神童を筆頭とする2・3年全員が速やかに弁当を片付けに入る。

なにやら、妙に慣れた手つきなのが怖い。凄く怖い。


「相変わらず腕は落ちてませんね」
『腕…というか足?』


ベンチからひっくり返った弟を見てそれを足蹴にする。
その光景に誰も突っ込まないのはもう暗黙の了承だった。




「諸君。これからもこのナルシストで腹立たしいとは思うけど弟をお願いね」





その笑顔はとても綺麗なものなのに足蹴にしている哀れな弟を見て恐怖を感じずにはいられなかった。






綺麗な花には棘がある

(ちょっと音無先生のところ行ってくる。処理は頼んだ)
((イエッサー))

●●

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -