剣城家の朝は早い。
京介は中学生、皆のお姉さん・優一は大学生という多彩な学年層の家族。
優一は入院中という事でいないものの両親は優一の入院費を払うため日々共働き、家族にかまっている暇は正直あまりないというのが事実だ。


『京介ー!朝ご飯とお弁当置いとくから!』
「…姉さん、俺の分は良いって…」
『言ってたけど作っちゃったんだから持ってって!』


バタバタとキッチンやら洗面所やら自室やらを行き来する皆のお姉さん。
既に家に母と父の姿はない。
朝早くからの出勤か、それとも出張にでも行っているのか、まぁ畔が冷めたに連絡でも来るだろう。

そんな風に育った自由奔放な皆のお姉さんは意外にも時間にはシビアな考えを持っている。
兄姉の中では一番の早起き。
そこから2人、または3人分の朝食を作り弁当を作る。
これを日課に自分の支度を完璧に整えて家を飛び出していく。


「…変わらないな姉さんは」


ドタバタと立つ音を尻目にテーブルに並べられた朝食をいただくことにした。
昔に比べて料理する回数が格段に上がっているので勿論料理の腕はそれなりだ。
普通の食卓よりかは少し豪勢な朝食を前に京介は手を合わせる。


「いただきます」


剣城家の教訓。
挨拶はちゃんとしないと皆のお姉さんが怒る。
こんなことをわざわざ言うのは面倒だと思うのだが言わないと次の日の夕飯が恐ろしいことになる。
または夕飯抜きになる可能性もあり得るので注意が必要だ。


『京介ー!洗面所に置いてあった櫛知らなーい?』
「こっちの机に置いてある」
『え、嘘』


会話をこなしつつも本日の朝食である和膳を平らげていき、その間に皆のお姉さんは準備を終わらせていっていた。
大学までの道のりは遠い為家を出るのは早い。
京介を一人家に置いて皆のお姉さんは家を出るのだがそれを寂しいと思っていたのはどれほど昔の話だろうか。

そんな事を思う間にフィフスセクターに顔を出さなければ、と複雑な思いが絡む。


『じゃあ京介行ってくるから!お皿よろしくいってきます!』
「了解」

『あ、京介』
「?」

『…アンタがどこに行ってるかは知らないフリしといてあげるけど……何かあってからじゃ遅いんだからちゃんと相談ぐらいしなさいよ』


もうこれ以上誰かが欠けるなんてごめんなんだから。
そう言って皆のお姉さんはリビングのドアを閉めた。

数秒後に玄関が開け閉めされる音、自転車をガチャガチャと弄る音が聞こえてきて皆のお姉さんが出て行ったのがわかる。



「……姉さんにはバレバレか」



隠しているつもりなのに京介がフィフスセクターに関与していることはお見通しらしい。
なぜバレたんだろうと思う前に、京介は食器をシンクに運ぶという習慣にもなってしまった行動をとるのだった。





習うより慣れる

(…油断も隙もない姉さんだ)
(あぁ…そういや"いってらっしゃい"言い忘れたな)

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