『豹牙ーっ!』

「なんだよ姉さん……カーテン閉めろよ眩しい…」
『雪合戦しよ!』
「…は?」


俺の姉さんは結構突拍子のないことを言い出す。
今日もまたしかり、休みの日に練習がないから久しぶりに寝れると思っていた矢先にこれだ。
気持ち良く寝てる弟の布団を引っぺがしてまで言うことか。


「面倒くせぇ……」


正直な所面倒くさい。実に面倒くさい。

だがこの誘いを断って姉さんの期限を損ねる方が面倒くさいだろう。
(この前誘い断ったら夕飯抜きにされた記憶がある)


「さっさとしようぜ」
『そう言わない!まずはシェルター作るよ!』
「そんなことまですんのかよ…」

『ほらやるぞー!』


今日は月に一度くらいの周期で訪れる面倒くさいレベルが高い日らしい。

足元に高く積もった雪が憎らしく感じてきた。
大体シェルター作る雪合戦なんて二人でするもんじゃねーだろ。
(ちなみにシェルターは雪を遮る壁みたいなヤツな)
作ること前提で外出てきたんならなんか準備でもしておいて欲しかった。

鼻歌を歌いながらシェルターを作る姉さんに対し、寝かせて欲しいと言うのが正直な本音だ。
生まれてから雪と隣り合わせに生きて来た俺達は幼い頃からよく雪で遊んでいた。
勿論雪合戦も腐るほどやってきたし雪扱いはお手の物、シェルターはあっという間に出来上がる。


『うわ、豹牙作るの早くない?』
「姉さんが遅いだけだろ」
『じゃあ手伝ってよー』
「なら俺以外にも誰か呼べばいいだろ」

『…そっか!』


こう言えば姉さんが取る行動は一つ。
これも昔から変わらない俺の巻き込み癖だと思う。

ポケットからケータイを取り出す姉さん、どうせそのケータイで連絡する先は決まっている。


『どうせならサッカー部の皆呼んじゃお!』

「…吹雪さんも呼べるけど呼ぶか?」
『え!?呼べるの!?』
「今日暇だって言ってたしメール入れとく」
『やったぁ豹牙大好き!』


予想通り、サッカー部全員を巻き込んでしまおうと計画し始めた姉さんにちょっとしたサービスを決行しようと言った瞬間頭に柔らかい衝撃。
どうやら姉さんが雪玉を投げたようだ。


「…吹雪さん呼ばねーぞ」
『やだ呼んで!』


嬉しいんだかなんなんだか矛先を俺に向けるのはやめてくれよと思いながら俺は静かに吹雪さんにメールを打った。






ベクトルは下に向かって

(吹雪さん後から来るってさ)
(ホント!?やったー!)

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