皆のお姉さんが初めてこの部室に来てから皆のお姉さんがよく顔を出すようになった。
いや、弟である南沢的には出すように"なってしまった"かもしれない。


『君たち春ちゃんはどうした』

「今日は遅れて来るって昨日言ってただろーが。昨日も来てたんだから覚えろよ」
『うん。篤志煩い』
「ぅぐっ」

「あ、元祖ソニックショット」


こうして南沢(弟)が宙を舞うこともしばしば。
最初は皆のお姉さんの南沢を吹っ飛ばす程のキック力を尊敬しつつ一種の寒気を覚えていたが、今では恐ろしさすら尊敬の一部に値していたり。

ここに来る目的は春菜目当てが多いのだが時には差し入れだけ渡して帰っていったりもする。
皆のお姉さんの気まぐれなのかただ単に春菜がいなかったからなのかそれはわからない。
真意を知るのは皆のお姉さんだけな為、弟にですらわかる筈もないだろう。


『ま、いいや。春ちゃん来るまでコーチしてるから』


そしてベンチに我が物顔で座り込み、既に始まっていた練習に対し気だるそうな態度とは裏腹にテキパキと指示を出していく。


「…いつもそうしていて貰えませんか」

『うーん?そうだなぁ……神童くんがずっと一緒にベンチにいてくれたら考えるかな』
「ちょっと誰か今すぐ音無先生呼んできてくれ」
『あぁ霧野くんでもいいけど』
「断固拒否します」
『つれないなぁ』


唇を尖らせ弟と同じく自慢の前髪をサラリとなびかせる。
本来ならば腹立たしいその姿が絵になってしまうところが憎めないというところだ。


「大体なんで俺たちばっか構うんですか」

『え?天馬くん達も可愛がってるが』
「そうじゃなくてセクハラ的な意味で」

『セクハラって言い過ぎじゃないか?』


足元に転がっている屍(弟)を足蹴にしながら皆のお姉さんが口を挟んでいった。
霧野、神童、2人の間にはため息しか空間を埋め尽くすものがなくなり頭痛すら感じてくる。
南沢さん助けてくれとも思うのだが生憎足蹴にされている。残念。

こんなことになるなら早々にグランドに出て指示を受ける方になればよかった。2人は切実に思う。


「「はぁ…」」
『幸せが逃げても知らないぞー』

「「誰のせいですか」」


息ピッタリ、と含み笑いを見せて次はグラウンドに指示を飛ばす。


「……いつもこうしててくれれば俺たちももっと友好的になるのにな」
「な」


流石にスポーツに関わっているだけあって指示は毎度的確なものばかり。
南沢弟の様にカリスマ性は持ち合わせている。
ただしその使い道を誤っているような、そんな気がしてならなくさせるのが姉の皆のお姉さん。


『…それは本当か?』
「は?」

『本当にもっと友好的になってくれるのかと聞いている』


「……まぁ…少しは」
『よしじゃあ真面目にやろうじゃないか』


言った途端、目の色を変えて言い切った皆のお姉さんに2人が目を見開いた。


『天馬くん!ドリブルのスピードが落ちている!
倉間くん!シュートコースの見極めが甘い!
三国くん!シュートへの反応と踏み込みが遅い!』

「「「はい!」」」


声を張り上げた皆のお姉さんの指示にグランドから返事が返る。
突然の豹変ぶりに驚きを隠せないベンチ。
そして驚きと同時にこみ上げる呆れが若干。


「……どういうことですか」
『ん?』
「いつも音無先生が言った時しかそんなに言わないじゃないですか」

『それはもちろん……』








かわいければ性別は問いません

((答えになってません))
(そういうことさお二人さん)

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